部下のキャリア開発や
チームビルディングにも活用できる

 キャリア・アンカーはマネジメントにもぜひ活用してほしいフレームワークです。部下のキャリア・アンカーを把握することで、部下のモチベーションアップやキャリア開発の参考になります。

 また、キャリア・アンカーはチームビルディングにも有効です。メンバーそれぞれの「やりたいこと」や「得意なこと」を自分で認識するきっかけになり、互いに仕事に関する価値観を共有できるため、上司・部下の関係性をより良いものにすることができます。

 たとえば、「奉仕・社会貢献」により価値を置いている部下には、意識して上司や周りからの感謝の言葉を積極的に口にしてみるようにしたり、「自律・独立」の価値を重んじる部下には、必要以上にマイクロマネジメントをしていないか見直したりと、実際の行動に反映することで、より個々人に寄り添ったマネジメントができるようになります。

評価には結びつけず
価値観の深掘りとして活用する

 キャリア・アンカーをマネジメントに取り入れる際に気をつけたいのは、「キャリア・アンカーを個人の評価に結びつけて考えない」という点です。あくまでもその人の価値観を深掘りするためのものであり、どのような結果であっても優劣をつけずに尊重する姿勢が求められます。

 また、一度診断されたキャリア・アンカーに意識が固定されてしまうと、それがキャリア形成の診断軸になり、キャリア選択を制約してしまいかねない恐れがあります。今携わっている業務がキャリア・アンカーにフィットしないと感じることがあっても、安易なジョブチェンジはおすすめしません。

 たとえば「起業家的創造性」に高く価値を置く人が管理業務に就いていたとしても、その業務の中で、自分のアイデアを生かしてオペレーションを改善することはできるはずです。キャリア・アンカーを職業そのものと紐付けないことが、キャリア・アンカー活用のコツといえるかもしれません。長期的なキャリアの道筋を見据えながらも、今の仕事の中で価値観に沿った仕事を見いだせないか、トライしてみましょう。