「なぜここまできて仕事を」という疑問の一方、起業する人も
2019年の「リモートワーク実証実験」は『Business Insider Japan』の主催で、東京から離れて仕事をするとどうなるか?をテーマに実施された。参加費も交通費も参加者負担。にもかかわらず30人の定員に約150人の応募があり、約50組が参加した。ひと月間海辺のバンガローを借り切り、 仕事はセレンディップホテルの1階のほか私設図書館「さんごさん」などにWi-Fiを設置して活用。
参加者の顔ぶれはさまざまで、ウェブマーケター、起業家、編集者、育休中の女性など会社員もいた。島にいる間の行動は自由なので体験談はそれぞれだが、みな仕事をしながら五島市内をあちこち移動し、釣りをしたり飲みに行ったりと島暮らしを楽しんだようだ。
この時の参加者の感想が、『Business Insider Japan』やnoteで公開されている。もともと田舎暮らしに興味のない20代の女性編集者が、島の人たちに親切にしてもらい、都会ではわからなかった気付きを得た話や、子どもが現地の小学校に体験入学し打ち解けていく話などがあった。
参加後のアンケートでは、満足度は9割と高い。一方で「ワークスタイルは変化しそうか?」に対して「変化する」と答えた人は3割にとどまった。多くの参加者が書いていたのが「なぜ私は五島まできて仕事をしているんだろう」という疑問。子どもからも「なぜ五島まできて学校に行かなければいけないの?」と問われる。東京での仕事をそのまま持ち込んで失敗したという人もいて、ワーケーション先での過ごし方を考えさせられる。

そして2020年に行われたのが「ワーケーション・チャレンジ」。前回と同じく1カ月間、地域課題解決型ワーケーションとして真冬の1月に開催した。それでも62人が参加し、その2割は前回も参加したリピーターだった。
ワーケーションの成果は前述のように人によってさまざまだが、五島市にとっては大きな収穫もあった。参加者のうち6人が、その後、島で創業することになった。地元の人との交流の中でニーズがあると感じたウェブマーケターや、引っ越し業者が市場価値を感じ五島への進出を決めたという。その他、冬の観光閑散期でも人が集まることを証明できたこと、観光目的で島を再訪したいと答えた参加者が多かったことなど、関係人口は増えたといえるだろう。