「ITの専門家」だけじゃない
DX推進に必要なのは「変革できる人」

 では、DX推進に着手した企業は、実際どのように人材採用を行っているのでしょうか。これまでの事例をベースに、フェーズごとの採用の動きをお伝えしましょう。

<フェーズ1:DXに取り組み始めたばかりの企業では……>
 戦略策定から担える事業責任者を採用。「業績アップや業務効率化に向けて、デジタルをどのように活用するか」を経営陣とともに検討し、方向性を定める。

<フェーズ2:DXの方向性が決まった企業では……>
 DX戦略を推進する人材として、プロジェクトマネジメント経験を持つマネジャー、リーダークラスを採用。既存の情報システム部門、あるいは外部パートナーと連携し、推進体制を整える。

<フェーズ3:DX推進が軌道に乗りかけた企業では……>
 メンバークラスを採用。これまでの大手企業の事例では、数カ月~半年の間に20~30人規模の組織を作り上げるケースが多く見られる。

 現在は、上記いずれかのフェーズにある企業が多く、特にマネジャー、リーダークラスのニーズが高い状況です。なお、先立ってDXへの取り組みを進めてきた企業では、30~40人の組織規模からスタートし、現在はさらにメンバークラス数十人の増員を図る動きが見られます。

 さて、「DX推進を担う事業責任者、プロジェクトマネジャー・リーダー」と聞くと、ITのスペシャリストを想像する方が多いと思います。しかし、実はそうとは限りません。

 もちろん、データサイエンティストやデータアナリスト、システムエンジニアやITコンサルタントといった人材を、IT業界から迎えているケースは多くあります。

 しかし、私たちが「DX推進のためにIT人材を採用したい」とのご相談を受け、対話を進める中で課題や目的が明確になると、IT人材以前に必要とされる人材が浮かび上がることもあります。それは、職種分野に関わらず、「改善」「変革」を推進できる人材です。
 
 既存社員では固定観念にとらわれ、また、さまざまなしがらみもあり、これまでのビジネスや業務オペレーションの仕組みをなかなか変えられないこともあります。そこで、異なる視点や発想を持つ人材を外部から迎え、変革の推進を任せるというわけです。

 一方、求職者側も「変革にチャレンジしたい」という思いから転職を検討するケースが増えてきました。大手企業に勤務し、DXへの興味や課題意識を強く持っているものの、自社では取り組む兆しがないため、危機感や不信感を抱く。そして、「新しいチャレンジがしたい」「変革の経験を積み、キャリアの価値を上げたい」という思いを抱いて転職エージェントに相談に来られるのです。

 そして企業側も、採用選考において「変革への意欲」「DXに対する興味・関心の高さ」を重視するため、両者のマッチングが成立する採用事例が多数生まれています。