DXを成功させるポイントは
「CX」「PX」の同時推進
いち早くDXに取り組んだ先進企業では、すでにDX専門部署が100名規模にまで達している状況です。そうした企業の組織・人材戦略に伴走してきた中で、わかったことがあります。
DX推進にあたり、「CX」「PX」もセットで進める必要があるということです。CXとは「カルチャートランスフォーメーション」、PXとは「パーソナルトランスフォーメーション」を指します。
DX推進の拡大期には、DX部門と既存部門の間に壁ができてくることがあります。例えば、新しいシステムを作ったのに現場で使われない。紙ベースで行っていた顧客管理をタブレットに移行したものの、営業職員が誰も顧客情報を入力しない……といったように。つまり、テクノロジーの導入以前に、それを受け入れる風土改革、全従業員の意識改革を行わなければ、空回りに終わってしまうということ。その課題を解決するための取り組みがCX=カルチャートランスフォーメーションです。
CX推進の役割を担うのは、既存社員であるケースも、外部から迎えた中途採用者であるケースもあります。割合は半々といったところでしょうか。中途入社者であれば、「これまではこうだった」という固定観念やしがらみに縛られることなく推進できるところに期待が寄せられます。
また、既存社員が担う場合も、別の部署から招くほうが変革を生み出しやすいと言えます。いずれにしても、多くの人を巻き込む力、多少の痛みや苦労を覚悟で推進できる人材が求められます。
一方、PX=パーソナルトランスフォーメーションとは、人材育成や採用したIT人材のキャリア構築に関わること。先進企業では、既存社員全員にデータ分析を学ばせる動きも出てきています。専門人材に育て上げようということではなく、デジタル化したシステムやツールを「使う側」の現場社員もリテラシーを身に付ける必要がある、と捉えられているのです。
また、DX推進人材の待遇やキャリアパスも、PXの課題の一つ。通常の給与テーブルから外れた高年収で採用したデジタル専門人材をどのように評価し、昇給させていくのか。先々にどんなキャリアパスを提供できるか。そこを明確にしなければ、採用は成功しませんし、仮に採用できても定着につながりません。何しろDX人材はあちらこちらから引く手あまたであり、選択肢が豊富ですから。
このように、これからDXに取り組むのであれば、PX・CXといった2つの改革も同時に考えていくことが大切なのです。
では、この数年でDXに取り組んできた企業の中で、うまくいかなかった企業はどんなところでつまずいたのでしょうか。次回・後編では失敗パターンの具体例と、採用成功のポイントについてお伝えします。
(リクルートキャリア マネジャー 早崎士郎)