自分らしさを生かした就活に転換
他の接客業、IT業界に進む人も

 紹介した2人は「いつかリベンジするために就職する」「新しい道に進む」ことを決めたが、夢をかなえるのが難しくなった就活生たちが彼女たちのように就活を立て直すのは容易ではないだろう。

 それに対して、リクルートキャリアが展開するリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーである松井美佐紀氏は、こうした就活生たちと面談するときに以下のようなことを心掛けた結果、彼ら・彼女らの新しい道が開けるケースも多いという。

「私たちは航空業界などへの思いを聞きつつ、自己を掘り下げてもらいながら、先の未来で夢をかなえる方法もあるという話をするようにしている。お客さま対応、ホスピタリティーを必要とする仕事に興味を持つ人が多いので、接客業に就く人もいれば、実はモノづくりやコミュニティーの中で協力するのが好きだったと気付き、IT業界で営業やエンジニアとして働く人もいる。最初は諦めきれないが、内定者研修などが始まると自信も湧くのか、自分らしさを生かせるところで活躍したいと切り替える方の方が多い印象がある」

 採用市場全体に視野を広げると、航空業界を目指して努力してきた就活生は、ホスピタリティーがあることなどを理由に人気も高い。新卒学生向けの就職・採用支援をしているプレシャスパートナーズの矢野雅専務取締役は、こう語る。

「人に関わることが好きな学生が多いため人材業界からの問い合わせや、普段は大手志向の強い彼ら・彼女らをベンチャー企業が広報などで採用したいという声も当社に寄せられている」

22年卒は「現実的な就活」へ
想定外を受け入れてキャリアの成長に

 では、3月から大手企業を中心とした採用広報が解禁になる中で、もともと航空業界を志望していた22年卒学生の就活は、どのような状況なのだろうか。矢野氏は「21年卒の学生よりも時間的な余裕がありながらも、危機意識は強い」と語り、こう続ける。

「21年卒学生の様子を見ているからか、早めに就活を進めている印象が強い。もともと航空業界志望の学生であっても、動向を横目でみつつ、幅広く業界を見ていこうと現実的な行動をしているようだ」

 選考のステージにも立てないまま、夢をいったん諦めなければならなかった就活生たちは、もどかしさを抱えても誰のせいにもできないまま、現実を見て行動せざるをえないのが現状だ。

 そうした彼ら・彼女らの状況に対し、就活生の実態に詳しい就職みらい研究所の増本全所長は、たとえ思ったような就職活動ができず、夢がかなわなかったとしても、「行動を続ければ、『かなう夢』が見つかるようになる」と語る。

「スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提唱したキャリア理論の中で、『キャリアの8割は予想しない偶発的な要素で決定される』と論じている。たとえ夢がかなわなくても、与えられた機会を受け入れることで成長につながり、力がつく。つまり、夢が代謝されていくことで、キャリアの構築につながっていくということだ。学生たちには、その偶然もぜひ前向きに受け入れていってほしい」(増本氏)