新卒一括採用の耐用年数も限界に近づいている?

 ところが、バブル崩壊後、求人数が急減したことで求人倍率も急低下した。とりわけ、金融機関の破綻が相次いだり、ITバブルが崩壊した2000年前後は1倍前後にまで下がり、「就職氷河期」といわれた。この頃から日本型人事システムには綻(ほころ)びが見え始め、「終身雇用」も「年功序列」も徐々に崩れていった。

 しかし、「新卒一括採用」だけはほとんど変わることがなかった。2000年代に入ると景気回復で再び求人倍率は2倍を超えるようになった。2008年のリーマンショックでいったん下がったものの、その後また、2014年度(2015年卒)あたりから昨年までは回復基調にあった。

 このように、求人倍率のアップダウンはあるものの、表向き「新卒一括採用」はそれなりに維持されてきた。だが、日本型雇用システムの崩壊に続いて、「新卒一括採用」の耐用年数もいよいよ切れてきたのではないか。

 以前から、「新卒一括採用」をめぐる企業側と大学側の議論は、企業と学生の接触などのタイミングをいつから解禁するのかといった“スケジュールをどうするか”が中心だった。

 紆余曲折を経て、ここ10年ほどは経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)が旗振り役を続けていたが、2019年度、ついにその役を降りた。

 実際、就活のスケジュールはなし崩し的に前倒しが進み、内定出しの時期は分散化している。選考採用のプロセスも、基本型だけでなく、インターンシップ併用型やインターンシップ特化型が増え、さらに通年採用や既卒者採用などを行う企業もある。

 今後は、スケジュールなどの形式面の議論から抜け出して、学生にとっては自身のキャリアをどの企業において、どのような職種からスタートするのか、企業にとっては人事戦略、さらには経営戦略の重要な柱として採用計画をどう組み立てるのか――こうした議論が行われるようになるはずだ。