揺るがない「プライド」をもつために、
やるべきたった一つのこと
彼は、1年生のときからずっと補欠でした。
決して明るいタイプではなかったので、ワイワイ盛り上がるのが好きな僕と特に仲がよかったわけではありません。だけど、僕は、彼のことが妙に気になって仕方がありませんでした。
というのは、レギュラー選手にばかり注目が集まるなかで、彼は全く目立つことのない地味な存在でしたが、いつも堂々としていたからです。そして、不平不満など一切口にせず、チームの誰よりも厳しい練習を続けていました。みんなが練習を終えても、ひとりで泥まみれになりながら、黙々と基礎練習を繰り返していたのです。
その姿を思い出して、僕は気づきました。
彼は、「本物のプライド」をもっていたんだ、と。
彼は、アメフトを心から愛し、優れたプレイヤーになるために、できる限りの努力をしていました。そして、おそらく彼は、誰よりも努力をしている自分に「プライド」をもっていた。彼の「プライド」は、レギュラーであるか、補欠であるかに左右されるものではなかった。だからこそ、レギュラーばかりチヤホヤされるなかでも、揺るがず堂々としていたのです。
しかも、最終学年である4年生のときの大切な試合でついにレギュラーとなり、チームにとって必要不可欠な存在となりましたが、彼は一切態度を変えることはありませんでした。偉ぶることなく、それまでどおり誰よりも厳しい練習を続けていたのです。そんな彼の姿を思い返しながら、「あいつ、めちゃくちゃカッコええやん」と思いました。
偽物の「プライド」など
捨ててしまえ
そして、僕はこう考えました。
他人に否定されることで傷つくような「プライド」なんか偽物にすぎない。そんなもん捨ててしまえ、と。
世間が“保険屋”と否定しようがどうしようが、それは彼らの勝手。僕には関係のないことです。彼らが“保険屋”と思うのならば、それで結構。「その通り、俺は“保険屋”だ」と受け入れるほかありません。
そして、“保険屋”は売ることでしか存在価値はないのだから、そのために出来る限りの努力をするしかない。その努力が、自分に恥じることのないものであれば、他人からどんな評価をされようとも、自分の「プライド」は絶対に揺るがない。それこそが、「本物のプライド」だと思ったのです。
その後も、僕は何度も否定されましたし、たくさんの失敗もしてきました。
だけど、心を折られることなく頑張ってこられたのは、「補欠」の同級生に教わった、「本物のプライド」が僕を支え続けてくれたからです。
彼は、「優れたアメフト選手になる」という目的を達成するために、誰かと比べるのでもなく、誰かの評価にとらわれるのでもなく、ただひたすら自分自身と向き合いながら努力し続けました。これこそが、「本物のプライド」をもつ唯一の方法だと思うのです。そして、この「本物のプライド」こそが、僕たちを強くしてくれるのです。