今年2月9日、世界最大の半導体ファウンドリーである台湾のTSMCが、日本に研究所を設立すると発表した。このことは、ある意味では、TSMCにとってわが国企業の技術力の重要性が高まっていることを国内外に証明する機会にもなった。一方同社は、世界屈指のIT企業である韓国サムスン電子をライバル視して急速に追い上げる姿勢を示している。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
台湾のTSMCが
日本に研究所を設立すると発表
今年2月9日、世界最大の半導体ファウンドリー(受託製造企業)である台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)が、日本に研究所を設立すると発表した。
設立の主な目的は、チップを立体に積み上げる「3D IC(3次元IC技術)」の素材や後工程に関する研究だ。同社がわが国に研究拠点を設けるのは初めてのことだ。
今回の発表は、ある意味では、TSMCにとってわが国企業の技術力の重要性が高まっていることを国内外に証明する機会にもなった。TSMCは、これまでDRAMなどのメモリ半導体やスマートフォンの収益拡大によって急成長してきた。同社は韓国サムスン電子を急ピッチで追い上げ、IT関連分野で名実ともに世界のトップに立つことを狙っている。
同社のビジネスモデルは、基本的にほかの企業との協業を想定する、いわゆるオープンイノベーション型だ。そのためにTSMCは、高い技術力を持つわが国の企業や研究機関との関係を強化することを考えたのだろう。
一方、サムスン電子は、韓国政府の方針もあり、自社内での内製型、あるいは国内企業による国産型にかじを切っている。ビジネスモデルには違いはあるものの、両社ともに世界のIT関連ビジネスの勝者であり、互いに覇を争うライバルであることは間違いない。
TSMCとサムスン電子が激しい戦いを展開する中、わが国企業にも相応のチャンスは残されている。