2018年夏、父親が死亡した。一家が当時住んでいたアパートの家賃は、5万5000円であった。八尾市での生活保護の家賃補助の限度額は、3人世帯なら5万1000円、2人世帯なら4万7000円、1人世帯なら3万9000円である。母親と長男の2人世帯であれば、引き続き家賃5万5000円のアパートに住み続けることは、上限額を8000円上回っているけれども、認められる可能性が高い。

 しかし、1人世帯の上限額に対しては、1万6000円上回ることになる。基準に対して家賃が高額すぎる「高額家賃」として、ケースワーカーは転居を指導した。転居費用として約20万円が支給されたが、母子は他の用途に使用してしまったようである。そもそも、母親1人の保護費で母子2人が生活しているのであるから、転居費用の約20万円は、生活費の不足分の補填だけで消える可能性もある。そして長男は、就労と失職を繰り返していた。

 母子は、公共料金の滞納を繰り返した末、家賃を滞納し、2019年5月頃に住居を喪失して路上生活となった。2019年6月、福祉事務所を訪れて助けを求めるまで、友人たちの小さな支援の数々に支えられていたようであるが、「共助」の限界を感じたのかもしれない。

母子を死へと追い詰めた
月2万円の保護費減額

 2019年6月、福祉事務所を訪れた母子に対応した係長は、転居費用として支給した約20万円の一括返還を求めた。母親は分割払いを求めて交渉し、結局、月あたり2万円で10回払いでの返還ということで合意したという。受け取りすぎた保護費は、不正受給であってもなくても返還が必要であるが、精算の“財源”は生活保護費だ。「最低限度」の生活費からの返還が、生活を「最低限度」以下にしてしまうのでは、最低限度の生活が保障できなくなり、生活保護の目的が果たせなくなる。

 このため厚労省は、返還については、単身者で1カ月あたり5000円、2人以上世帯で1万円を上限としている。月あたり2万円の返還は、厚労省方針の4倍にあたる。