本書の要点

(1)多くの人が、思い込みにより、頑張りや努力を重ねても幸福から遠ざかっている可能性がある。そこで「幸せになるための正しい知識」と、それに基づいた行動が重要となる。
(2)お金については、稼ぐことよりも使い方に工夫をする。そして人間関係については、人との温かいつながりをつくり出す。そうすれば幸福度を上げられる。
(3)人の幸福度に影響を与える感情は、ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度の3つである。

要約本文

◆私たちは「幸せの素人」
◇人生の損をしているという事実

 誰しも「自分にメリットがある」選択をしたいと思って行動している。しかし、本当にそれにメリットがあるのかどうかが定かではなくても、人間の脳は、一度選択した行動を正当化しようとする。さらには、損をする選択自体を「正しい」と思い込み、その選択を繰り返していく。「頑張っているのに望む結果が得られない」「なぜか毎日に充実感がない」。こうした「モヤモヤ」も実はこのメカニズムに関係している。

 例えば、次のようなことを「正しい」と思い込んでいないだろうか。家族のために一生懸命働くことは素晴らしいことだ。夢や目標が叶ったら幸せになれる。嫌なことがあっても常にポジティブでいることが大切だ。

 実はこれらは、私たちを苦しめ、損をさせている可能性がある。本書では、お金、結婚、人間関係、仕事の問題を中心に、幸せにまつわる思い込みの誤りを、科学的な裏付けをもとにして明らかにしていく。

◇「モノ」ではなく「経験」にお金を使う

 お金がすべてではないとよくいわれるが、はたして本当だろうか。実のところ、お金は私たちを幸せにしてくれるということが、科学的にも証明されている。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授は、「人は収入が増えれば増えるほど幸せになる」と述べている。

 ただし、それが成立する限界は、年収800万円だという。800万円付近を境に、それ以上収入が増えても幸福度はほぼ変わらない。また年収が2倍になっても、幸福度は9%しか上昇しないというデータもある。では、お金を通して幸福度を高めるにはどうしたらよいのか。