それでも、自分にできることを懸命にやり、困ったときは部下に頼り、正直に弱い部分をさらけ出し、必死に汗を流していると、だんだんとメンバーたちの態度にも変化が表れました。「この頼りない上司を助けてやろう」と思って、がんばってくれるようになったのです。
最終的には、31支店中25位より上位の成績をとったことのない、野球でいう万年Bクラスの支店を2年連続で日本一に導くことができました。
こうしたサラリーマン時代の経験を活かし、2001年から、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」(公益財団法人 日本生産性本部)で、多くのリーダーたちの育成に携わってきました。
企業、業界団体、自治体などからの依頼で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込み、リーダーのみなさまとともに考え、行動し、悩みの解決を図ってきました。セミナーやコンサルティングを通して指導したリーダーの数は1万人を超えます。
「浅井さんのおかげで、リーダーとしてやるべきことが明確になりました」と温かい声をいただく一方、悩みを解消できないリーダーからは、新米ベテランを問わず、日々多くのリアルな相談が寄せられています。
リーダーが抱える悩みに直接アプローチしたい。
その思いが結実したのが本書『1万人のリーダーが悩んでいること』です。
本書では、1万人を超えるリーダーたちから寄せられた悩みの中から、50を厳選。ひとつひとつの悩みに対し、私なりの「答え」を示しました。
「悩み」の原因は、たったひとつ
リーダーが抱えるあらゆる悩み。その根本には、「会社から求められる業績に対するプレッシャー」があります。
もし会社が「業績なんてどうでもいいよ。売上を上げようが上げまいが、君の評価には関係ない。楽しくやりなさい」と言ってくれたら、どんなにラクでしょう。しかし、リーダーは常に業績に縛られています。
どんなリーダーも、任されたチームと自分自身について、「あるべき姿」と「現実」とのギャップに苦しんでいるのです。
ところが、実際に1万を超える「リーダーの悩み」に目を通してみると、「業績に対するプレッシャーに耐えられない!」というストレートな声は極めて稀です。
悩みのほとんどは「部下とのコミュニケーション」に関するものばかり。
なぜなのでしょうか。
1万人の悩みの大半は「部下とのコミュニケーション」
何回同じことを言っても動いてくれない。
能力が低い。成長意欲がない。
そのくせ反抗的な態度ばかりとる。
業績を上げることが、リーダーの大切な仕事にもかかわらず、リーダーの悩みの大半が「部下に関するもの」なのは、なぜか。