このコロナ禍では、成長を目指すだけではなく、ムダを省き、筋肉質な経営を目指さなければいけません。リモート経理を導入できれば、「コスト・働く時間」を劇的に少なくすることができます。経費精算のためにわざわざ出社していては、時間とお金をドブに捨てているようなもの。そもそも経理とは「経営管理」の略称。「営業」が会社の攻めを司る剣なら、「経理」は守りを固める盾です。右肩上がりの時代はどこの会社も営業重視でしたが、コロナ禍では経理がいっそう重要になりました。
本連載は、「リモート経理を導入するためのノウハウ」を紹介するものです。著者は「会計とITの融合」を得意とする税理士、井ノ上陽一氏。『リモート経理完全マニュアル 小さな会社にお金を残す87のノウハウ』を出版し、「いつでも・どこでも・誰でも」安心に経理業務ができるメソッドをあますところなく伝えています(イラスト:田渕正敏)
リモート経理は危険なのか?
「いつでも・どこでも経理ができるようにしておきましょう」とリモート経理の導入を提案すると、「そんなの危険だ」「セキュリティは大丈夫なのか」という反応がよく返ってきます。
本当に危険なのでしょうか?
新しいものや、これまでと違うことは、危険とみなされます。リモート経理も同様です。もちろん、リモート経理でも十二分に気をつけなければ安全性は確保できません。
しかし、それは紙を使う通常の経理でも同様ではないでしょうか。
リアル経理のリスクを考える
ある会社では、プリントアウトした書類を放置してしまい、それが元で情報がもれました。「お客様の重要な書類を飲食店に置き忘れた」という事例も見受けられます。現金を扱うと、紛失や横領の危険性があります。通帳があれば、その管理に気を配らなければいけません。
リモート経理も中途半端に導入してしまうと、危険性は増すものです。たとえば会社の重要書類を自宅に持ち帰る場合、その行き帰りや自宅での管理の問題が出てきます。いっそすべてデータ化したほうが安全なのです。
安全は効率とのバランスで考えなければいけません。車が安全でないからといってまったく使わないと移動効率は悪くなります。仕事も同様です。
「クラウド、データ化が怖い」と言う社員(社長)がいたら、その利便性を体験してもらい、安全性を伝えましょう。使ったことがないもの、知らないものが怖いのは当たり前です。
かつては携帯電話、インターネット自体が怖がられていましたが、今はみな普通に使っています。クラウドが出てきたのは2008年頃。クラウド会計ソフトfreeeのリリースは2013年。もう怖がる時代ではないのです。
「クラウドはデータが流出する」と考える方もいるでしょう。興味深いデータをご紹介します。