3月を迎え、22年卒学生向けの採用広報が解禁となった。さまざまな企業の業績が悪化しているコロナ禍で、就職氷河期の再来を不安視する声も高まっているが、実際に当時のように危機的な状況に陥る可能性はあるのか。就活生や新卒採用を行う企業の実態に詳しい、就職みらい研究所の増本全所長に話を聞いた。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
2月時点の内定率は約10%
今内定がなくても焦る必要はない
リクルートキャリアの就職・採用に関する研究機関・就職みらい研究所の調査によると、2月1日時点の22年卒学生の就職内定率は9.9%となった。これは前年同月と比較して+0.9ポイントと、大手企業を中心に順守されている就活ルールが「企業広報は大学3年生の3月解禁、面接は4年生の6月解禁」に変更されてから、過去最高となっている。
これに対して、同研究所の増本全所長は、「まだ新型コロナの影響が少なかった前年同時期を含む例年並みの内定率といったところ。すでに10%近くということで焦る学生もいるかもしれないが、その必要はない」と語る。というのも、内定出しが早まっているのは、一部の業種やある程度の従業員規模の企業に限られているからだ。
まず、同研究所が大学生に対し、2月1日時点の内定取得先企業の業種を尋ねたところ(複数回答)、最も多かったのが「情報通信業」で32.3%、次いで「医療・福祉業」(14.3%)、小売業(13.5%)となった。
また内定取得先企業の従業員規模について(複数回答)は、最も多いのが「1000人~4999人」規模の企業で42.2%、次いで「300人~999人」規模の企業(35.4%)だった。
「2月時点ですでに内定を出している企業は、構造的な人手不足に悩んでいる業種や採りたい人材が限られる専門的な業種が多い。また、従業員規模が『1000人~4999人』の企業はもともと採用人数が多いが、コロナ禍で安定志向の高まる学生がより大手志向になるのを恐れて、従業員規模5000人以上の大手企業に先んじて接点を持ちたいと考えているようだ」(増本所長)
一部の業種やある程度の従業員規模の企業では内定出しが早まっている一方で、あらゆる企業に及ぶものではないことは、企業の採用の見通しに関するデータからもうかがえる。
就職みらい研究所が2月に発表した『就職白書2021』によると、22年卒学生の採用プロセスの開始時期として「内々定・内定出し」を3月とする企業は15.7%、4月が16.2%、5月が11.7%、6月が14.4%となっている。つまり、内定出しの時期は分散する傾向がある。今内定がなかったとしても、それは単に志望する業界が内定出しのタイミングを迎えていないだけの可能性が高く、焦りながら就活をする必要はなさそうだ。