四大を出たわけでもない、コネもない、資格もない青年が、派遣社員として大企業に入社した。職種は、社員のコンピュータの不具合などをサポートする「ヘルプデスク」。そんな彼が、どんどん社内の有名人になり、ぶっちぎりの出世を繰り返し、わずか10年で巨大グループ企業の執行役員になってしまった。
遠い国の話ではない。日本で、しかもほんの数年前にあった本当の話である。いったい、どんなことをやったらそんな超高速スピード出世が可能になるのか?
『派遣で入った僕が、34歳で巨大グループ企業の役員になった小さな成功法則』(ダイヤモンド社)には、その秘密が詳細に書かれている。本書より、その超高速スピード出世物語の一部を紹介していこう。
コピペ&パクリ英語術
「依頼を受けたら、必ずやり通す」これが僕の信条だ。だから、室長からの英語メールの下書きという仕事も、全身全霊でのぞんだ。というか、そうしないとこなせない。
室長から日本語で書かれた文章が送られてきて、そこに「これ、ちょっと英訳して教えてくれ」とある。曖昧で遠回しな日本語表現も多いので、苦労した。ニュアンスをどう説明していいのかわからない。「これで本当に外国人の相手はわかるのかな?」。そんなことを半分思いながら英文を書く。
最初は、辞書を片手に、時間をかけて英文を作った。ただでさえ通常業務が忙しいので、メールばかりに掛かりきりになっているわけにはいかない。
「何か抜け道があるはずだ」と考えた僕がとった行動は、ネイティブのメールをコピーしてしまうこと。ビジネスメールなんて、数パターンのやりとりで往復しているだけだ。だから、外国人側から送られてきたメールの言い回しをコピペして、必要なところだけ、文章をイジってみようと思いついた。
ある時、アメリカへ出張に行く室長から、現地のアメリカ人社員とアポをとりたいから、メールで連絡をとっておいて欲しいと依頼された。僕の英語力では、「予定が空いていますか?」というのを、的確なビジネス英語でどう表現するのかはパッと思い浮かばない。
だから、前にアメリカ人の社員が、日本側に向けて英語でアポをとりたいと依頼してきたメールを検索して取り出してみた。すると「TIME SLOT(タイムスロット)」という言葉が、「時間枠」として使われていた。これは、カッコイイ感じのする良い表現だ。だから、僕はそのメールをそのままコピペし、変える必要のあるところだけ変えた。
社外に出るメールであれば、原文がわかるようなコピペメールを送ったら問題があるかもしれない。だが、社内同士であれば、コピペだとわかっても大した問題にはならないだろう。それぐらいの気持ちだった。
こうやって、薄氷を踏む思いで、上司の英語メールの下書きを作っていた。そんなことは、上司は知る由もない。むしろ、外国人が僕のメールに対して、「彼の英語のメールには、ネイティブっぽい表現がちりばめられていてけっこう自然な感じだ」と褒めてくれることもあった。僕は「IT」に加えて「海外との連絡係も二宮くん」という感じのキャラクターになり、頼られる雰囲気が作られていった。
1979年徳島県生まれ。高校卒業後、ミュージシャンを目指して米国に渡るが挫折。2003年に帰国。大塚製薬株式会社に派遣のヘルプデスクとして入社。上海万博出展などに携わり、またグローバルIT組織構築をグローバルリーダーとして推進。大塚倉庫株式会社 執行役員IT担当を経て独立。N&A株式会社代表取締役、株式会社オリエント代表取締役。情報セキュリティ戦略構築、組織づくり支援、教育等、各種コンサルティングを提供。特に欧米の高度セキュリティ・ソフトウェア開発の人材ネットワークを構築、国内外の企業に情報セキュリティ関連サービスを提供。著書に『派遣で入った僕が、34歳で巨大グループ企業の役員になった小さな成功法則』(ダイヤモンド社)。