日本では、新入社員に対して不満に思っている理由に、「私用に電話やメールを使っている」という上司の声が多く聞かれる。

 しかし、中国で働いた経験のある人はもっと公私混合している中国人に驚いたことがあるだろう。

 「中国人は、会社の固定電話をまるで自分の家の電話のように使う、長距離や外国にまでかけている人もいる」

 「会社のプリンター機の中のインクなどの部品まで持ち帰る人もいた」

 「ランチ後、数時間休憩をとりに職場を離れる人がいた」

 日本人管理職は彼らの行動を理解できず、憤慨していた。さらに、もっと驚くことに、それを見ている中国人の上司たちは何も注意していない。それどころか上司さえも電話したり、中には会社の中で、昼寝するだけでなく、寝泊りさえしている。

 いったい、なぜ、こんなことが起きるのだろうか?

 それは、平等主義のもとになりたっていた中国企業の形態にある。

国営企業のもとでは
公私の境がわからなくなる

 中国はもともと国有企業が多く存在していた。つまり、中国人のほとんどが国有企業に勤務していた。国がコントロールしている国有企業で働くということは、平等な賃金体系で終身雇用として国有企業に就職するということである。

 実際には国有企業に勤務すればその企業に属する社宅に住み、食事も会社の食堂を利用する。衣食住のうち、食も住むところもすべてその会社から提供されたものを利用するのである。そんな生活の中でどこからどこまでが公でどこからがプライベートなのかがわからなくなるのだ。

 たとえば、今でも恋人たちだけでなく、結婚した後の夫婦でさえも夫の社宅と妻の社宅を交代に宿泊している状態である。

 むろん、最近は民間企業も増えたこと、一部の個人がマンションを購入することができるようになったことで事情は少しずつ変わってきている。それでも新婚夫婦で年収も低い場合は社宅を交互に泊まっているのが現状である。

 国有企業に所属している限り、同時に会社の机もいすもホッチキスも鉛筆も何もかもが自分のものであるーという感覚である。

 しかし、それだけではない。公私混合の理由には中国人の働き方、雇用意識の特性もある。