「2025年問題」に対応する税制改正
2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に達し、うち127万人(日本企業の経営者全体の約3分の1)が後継者未定の状態となると見込まれている。これを放置すれば、中小企業の廃業が急増し、25年までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる恐れがあるといわれている。
中小企業経営者の高齢化が急速に進むなか、円滑な世代交代を通じた事業の持続的発展を確保することは喫緊の課題である。事業の継続が雇用維持につながることや、経営者が若いと売上高が増加する傾向があることなどを踏まえると、事業承継を円滑に行うことは地域経済の維持・活力向上の観点でも重要だといえる。
このような問題意識を背景に、18年度税制改正では、後継者の非上場株式等の取得に係る相続税・贈与税の納税を猶予する納税猶予制度(事業承継税制)について、従来の「一般制度」に加え、各種要件の緩和を含む「特例制度」が10年間の期間限定措置として創設された。特例制度は、中小企業経営者の税負担をさらに軽減することにより、円滑かつ早期の事業承継を実現させ、事業の継続・発展を通じた地域経済の活性化や雇用の維持を図るものである。
19年度税制改正では、手続き時に一定の添付書類を不要とするなどの改正が行われた。また青色申告を行っている個人事業者を対象に、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(個人版事業承継税制)が創設された。