就活に親子で臨む心構えと「ワンランク上」の4つのテクニックを伝授

4月になり、2022年3月卒業予定(現在大学4年生など)の学生の就職活動が本格化している。就活は社会への入口であり、社会人として働き始めた後には長いキャリアが待っている。その道のりを充実したものにするために、就活生とその親(保護者)に求められる姿勢を、有識者の実践的なアドバイスとともにまとめていく。(ダイヤモンド・セレクト「息子・娘を入れたい会社2021」編集部)

*当記事と前稿の前段となる 新型コロナウイルス感染症拡大で激変する採用市場(1) 新型コロナウイルス感染症拡大で激変する採用市場(2) 22年卒の就活戦線大予測!採用人数は絞られスケジュールは前倒しに  新卒一括採用、世界でも珍しいルールが日本で定着した理由 コロナで就活はどう変わっていく?学生の志向、スケジュール… コロナ時代の就職活動は「企業の人事戦略」をスタート地点に考える コロナ就活の重要キーワードは「ジョブ型雇用」と「人生100年時代」 も合わせてお読みください。

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2021」の巻頭特集記事「コロナ禍で大激震!“就活戦線”のいま、これから」の一部を転載したものです(加筆修正あり)。有識者コメントも紙媒体(雑誌)掲載時のものです。

親子で就活に臨む時には“俯瞰的な視点”が必要

 就活は受験とは違う。受験は、正解のある入試問題を解き、点数をどれだけとれるかを競うものだ。しかし、就活には正解も点数もない。勝ち負けではなく、本人が納得できたかどうか、さらにいえば、将来に向けてのキャリアをどうスタートさせるか、だ。

 就職コンサルタントの谷出正直氏は次のようにアドバイスする。

「社会に出てからは、さまざまな意思決定の場面があり、決めたことを良かったと思えるように行動することが肝要です。そのためにも自分で『決める』ということが大事になります。その『決める』ことのいちばん初めが就活です。就活ではどの企業も選択肢となり、さまざまな場面で『決める』がやってきます。そして最後は、入社する企業を1社に『決める』ことになります。この経験を自分でできるようにしてください。就活で『決める』経験ができなければ、この後も『決める』ことに不安が出てしまいます」

 親(保護者)が取るべき姿勢は明らかだろう。自分の子どもが就活で「決める」ことに口出したり、理不尽な横やりを入れることなく、温かく見守ることが肝心だ。

 親(保護者)へのアドバイスとして、他の識者へのインタビューでも共通した声は、「子どもが就活から帰宅したら、安心できる家庭の雰囲気を整え、金銭的なサポートも適宜行うべき」ということだった。

 いまの就活生は親(保護者)と幼い頃から仲が良く、その仕事や働き方に影響を受けている傾向もある(図表16参照)。だが、親(保護者)のサポートに感謝しつつ、自分の人生のハンドルは自分が握る覚悟が必要だ。それは、「学生気分」から「社会人モード」への切り替えということでもある。

 就活に向けた意識の切り替えについて、神戸大学大学院の服部泰宏准教授は次のようにアドバイスしている。

「ゼミ生などの就活を間近で見ていますが、能力的には差がなくても、就活の結果がくっきり分かれることがあります。その分岐点は、『大人の言葉』での表現力があるかどうかです。面接が本格的に始まる頃までに、そうした準備ができている学生とできていない学生で、内定の有無が生まれるのだと思います」

「大人の言葉」での表現力とは、単なるテクニックのことではない。社会に出て働くということについての意識の問題だ。社会とは何か、そこで働くとはどういうことか、自分はどうするのか、そういうことを日頃から考え、言葉にすることを繰り返すしかない。

 服部准教授が親(保護者)に対して求めている「壁打ち」相手というのも、そうした社会や仕事、そこでの自分の役割を考える相手になってほしいということだろう。

 それは、親(保護者)にとっても社会や仕事について考え、自分の生き方を振り返るきっかけになるはずだ。親子で就活に臨むにあたっては、俯瞰的な視点もぜひ持っておきたい。これまでの「新卒一括採用」という仕組みの耐用年数は切れ始めている。これからはますます、「就社ではなく就職」という意識が重要だ。求められるのは、「キャリアのパーソナル化」であり、「キャリアの自立」である。

就活に親子で臨む心構えと「ワンランク上」の4つのテクニックを伝授「息子・娘を入れたい会社2021」から転載
*データは同誌アンケート調査より
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 この点に関して、日立製作所の進藤武揚氏は次のようにアドバイスしている。

「人生100年時代を迎え、一生の間に複数の会社に勤めることも当たり前になります。そう考えると、大学卒業時の一括採用に乗り遅れても、大した問題ではありません」

 日立製作所では、ジョブ型雇用への切り替えにともなって、経験者採用の比重を高めていく予定だという。すでに社内公募やFA制、リファーラル(紹介)採用も増やしており、外部から転職してきた管理職や、いったん日立を辞めて他社で働き、再び日立に戻る社員なども珍しくない。

「キャリアのパーソナル化」「キャリアの自立」は大学や学部の選択から始まる。大学での学修を踏まえた就活は、その後に続く長いキャリアへの通過点に過ぎない。