ソフトバンクが約1.6兆円を投じ、米通信会社の大型買収に乗り出した。長期的なメリットは測り切れないものの、短期的な買収の相乗効果は見えない。勝算ははたしてあるのだろうか。

「日本テレコム、ボーダフォン、ウィルコム、この3社は『赤字3兄弟』という状況でして……」

ソフトバンクの孫正義社長(右)とスプリント・ネクステルのダン・ヘッセCEOは、スプリント買収交渉前からの知り合いだと明かし、仲のよさを強調
Photo by Toshiaki Usami

 10月15日、全米3位のモバイル通信事業者スプリント・ネクステルの買収発表会見で、ソフトバンクの孫正義社長がこう言ってみせると、会場に笑いが起こった。続けて、「われわれの傘下に入った瞬間に3社ともV字回復しました。3度あることは4度あります」と言い放ち、聴衆の心をつかんだ。

 それからはもう独断場だ。「男子として生まれたからには、いずれは世界一になるぞというぐらいの高い志は持っております」と宣言、さらに期限について質問が及ぶと「私が生きている間に必ずやる」と会場を盛り上げた。

 ある外資系アナリストは「国内の苦しい状況から目をそむけさせ、日本企業が海外に出て戦うという強い印象を与えた」と話す。

 まさに「孫マジック」にかかったと言っても過言ではないだろう。

 買収額は1兆5678億円(201億ドル)で日本企業による海外企業の買収としては過去3番目。既存株主から9438億円(121億ドル)で株式を買い取り、6240億円(80億ドル)を出資してスプリントの再建に充てる形だ。

 これによりソフトバンクは売上高が2倍になり、6兆円企業へと変貌。モバイル事業だけ見ても約9600万件の顧客基盤を有し、NTTドコモを抜いて国内トップに躍り出る。

 成長が鈍化する国内市場に見切りをつけ、市場が約3倍大きな米国に成長の果実を求め、競争の土俵を移したと言えよう。