レビュー
マスクの着用、アルコール消毒、3密回避など、すでに私たちは新しい生活様式を自らのものにしつつある。新型コロナウイルスが蔓延する前と後では、個人の行動や社会通念は大きく変わった。ビジネスシーンでもそうだ。テレワークがその最たる例である。2020年4月に発令された緊急事態宣言により、在宅勤務に切り替わったという人も少なくないだろう。日本テレワーク協会の統計(2020年4月に実施)によれば、緊急事態宣言を機に東京都内に籍を置く6割以上の企業がテレワークを導入しているという。
今、オフィスのあり方が大きく見直されようとしている。本書『さよならオフィス』(日経プレミアシリーズ)では、最新のオフィストレンドや新たな働き方、コロナ禍で注目を集めるキーワードなどが詳細に紹介されている。加えて、取材をベースにさまざまな企業の事例が紹介されているのも本書の特徴だ。取材対象は変化に柔軟なベンチャー企業から、日本経済を支える大企業まで幅広い。既に「オフィスを持たない」という決断を下した企業も登場する。
将来的にオフィスの価値は漸減していくのか、それともこれまでとは違った形で存続していくのか。個人の働き方はどのように変容していくのか。経営者はもちろんのこと、会社員、フリーランスなど、すべてのビジネスパーソンにとって、働き方を考える上での羅針盤となる一冊である。(小林悠樹)