名古屋大学 教授・天野 浩 Photo by KEIICHI FUKUMA

青色LEDに必要な高品質の結晶創製技術の発明に世界で初めて成功し、名城大学終身教授・名古屋大学特別教授の赤﨑勇氏、アメリカ・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の中村修二氏とともに2014年のノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学教授の天野浩氏。青色LEDの材料として注目が集まる窒化ガリウム(GaN)にはさまざまな可能性があるという。水の洗浄や高効率パワーデバイスなど社会課題の解決に資する窒化ガリウムの多様な研究の状況を中心に、今後の工学研究の展望について話を聞いた。(聞き手/三菱総合研究所 政策・経済研究センター 主席研究員 清水紹寛)

本記事は書籍『フロネシス17号 知材誕生!』(ダイヤモンド社刊)からの転載です。

水の殺菌から
エネルギー節減、無線給電まで

――ノーベル賞受賞後も引き続き、青色LEDの材料である窒化ガリウムの多様な研究に取り組んでいらっしゃいます。

 窒化ガリウムとは、窒素とアルミニウムに似たガリウムという金属が結びついた材料で、いろいろな能力を秘めています。

 たとえば、青色LEDの技術を応用した青紫色半導体レーザーの開発にも適用され、これはブルーレイディスクに使用されています。

 次に取り組んだのが、殺菌用紫外線光の機器です。紫外線には殺菌効果があり、水に当てるとそのなかの細菌を殺すことができます。青色よりも波長の短い紫外線を、LEDを使って発生させるための工夫を重ね、最終的に手の殺菌消毒用の機器が製品化されました。これをもう少し発展させ、水質の浄化につなげることができれば、世界中できれいな飲料水を欲している人を救うことができます。さらに、清潔なトイレが整備されていない地域に住む人々に、トイレを洗浄するきれいな水を供給することも可能になります。

 先進国でも用途はあります。紫外線殺菌なら、飛行機や長距離列車のトイレなど大きな殺菌装置が使えないところで水の浄化に使えるのです。

――「光」以外の使いみちについても研究が進んでいるそうですね。

 電気機器に使う効率的なパワーデバイスを窒化ガリウムの半導体でつくろうとしています。パワーデバイスとは、半導体で電気を変換したり、電気の流れを制御する装置といえばわかりやすいでしょう。

 エネルギーは電気から光へ、あるいは光から電気へというように、形を変えて使うのですが、変換する時のロスをできるだけ少なくすることで、大幅な省エネにつながります。パワーデバイスは、半導体によってスイッチのように接続を切り替えながら電力をコントロールしていますが、窒化ガリウムはこの働きを実現するのに最適なのです。

――そのような役割で力を発揮する窒化ガリウムの物性とはどのようなものなのでしょうか。

 窒化ガリウムは、熱伝導率が大きいうえに、放熱性が高く、高温で動かせます。また、高い電圧にも耐えられ、高周波でも反応し、飽和電子速度(電子が移動する速度)が速いので、電流の切り替えが素早くできるのです。パワーデバイスの開発は、まだようやく緒に就いたばかりですが。