どんなフォームが適しているかは、その人の目的によって変わってくる。たとえば、ベンチプレスひとつをとっても、野球のピッチャーが球速を上げたい場合はそれに適したフォームがあるし、ボディメークの人が胸板を厚くしたい場合はそれに適したフォームがある。スクワットにしてもクランチ(腹筋トレ)にしても、アスリートの人とボディメークの人とではやり方が変わってくるし、自分のどんな力を伸ばしたいか、どの筋肉を強化したいかによってフォームが変わってくる。

 つまり、筋トレで効率よく成果を上げていくには、その人の鍛える目的に沿ったフォームで行なっていくのがいちばんいいのだ。このため、フォーカスを当てるべきは、「(自分の目的に合った)このフォームで何回できたか」「(自分の目的に合った)このフォームで何キロまで上げられたか」という点になってくる。

 だから、私がトレーニング指導をする場合は、「フォームの維持」を徹底する。「このフォームを維持して10回」を目標に筋トレをスタートしたとしても、7回目でフォームが崩れたら、その時点で「はい、今日はここまで」とやめさせてしまう。もし、ラクなフォームで8回目、9回目を行なおうとしたら厳重に注意する。

 崩れたフォームやラクなフォームで10回までやろうとすると、間違ったやり方が脳と体にインプットされてしまい、成果を生み出す支障となる。それくらいなら、その日は7回でスパッとやめてしまうほうがいい。8回、9回、10回をやるのは、翌日以降にチャレンジすればいいだけの話だ。

 もし数日後にフォームを崩さずに8回目ができ、さらに数日後にフォームを崩さずに9回目、10回目ができたとしたら、その人は着実にステップアップして自分の望む成果に近づいていくことができるだろう。

 これに対し、回数、セット数、キロ数の罠にハマっている人は、最初から10回という回数目標を達成するのに躍起(やっき)になってしまう。10回という数字を追いかけることだけに集中してしまい、途中、フォームが崩れようが構わず突き進み、数を追い求めていってしまうのである。

 ひょっとしてみなさんも、回数やキロ数に囚われてフォームを崩し、なかなか成果が上がらず伸び悩むという罠にハマってしまってはいないだろうか。

プロアスリートでさえ
「筋トレ自体が目的」になってしまう

 じつは、プロのアスリートの中にも「筋トレの3つの罠」にハマり込んでしまう人が少なくない。

 たとえば、プロ野球選手の場合、たいていは「もっと速い球を投げたい」「もっと遠くへ打球を飛ばしたい」といったパフォーマンス向上が目的で筋トレに取り組む。ところが、筋トレに励むうちにだんだんベンチプレスやデッドリフトなどの回数やキロ数にこだわるようになり、いつの間にか「パフォーマンス向上」を都合のいい大義名分のようにして筋トレに熱中してしまうケースが多いのだ。なかには、ボディビルダーのように筋肉モリモリになっていく選手も少なくない。