日本人は世界一の風呂好きとして知られている。毎日のように浴槽に湯を張ってじっくりと体を温めることを日課とし、入浴時間も平均20分以上と、他の国と比較しても長い時間をかけている。しかしその半面、風呂場での死亡者数も多い。その驚きの実態と、絶対に知っておくべき対処法とは。(清談社 武馬怜子)
体力のある人も侮ってはいけない
風呂場の事故は誰でも起こり得る
今年に入って、歌手の松永ひとみさんが風呂場での転倒による脳挫傷で53歳の若さで亡くなった。16年には女優の白川由美さん、20年にも元プロ野球監督の野村克也さんも浴室で命を落としている。
厚生労働省の研究班の発表によると、風呂場での推定死亡者数は年間約1万9000人。全国の交通事故の死亡者数が2839人(2020年警察庁発表による)なので、およそ6倍になる。大半が65歳以上で、毎年12~4月に多く発生している。冬期になると高齢者の風呂での死亡事故がニュースになることもあり、全国各地の消防署や保健所がリーフレットを配るなどして注意を呼びかけるのが恒例だ。
入浴について医学的に研究している、東京都市大学人間科学部教授・温泉療法専門医の早坂信哉氏はこう語る。
「風呂場の事故は後述するヒートショックによる諸症状が最も有名ですが、それだけではありません。熱中症で意識を失うことによる溺死や、比較的若い人に多いのは転倒事故です。統計としては確かに高齢者が多いですが、入浴関連の事故は誰にでも起こり得ることなんです」