2大失敗パターンに陥らないために
大事な経営者との距離感

――先ほど、DXには経営層とのチーミングが重要との話があったが、経営層とDX推進チームの距離感はどう設定すべきか。

 失敗するDXには、2パターンあると考えている。それが、経営者が担当者に丸投げにしてしまうケースと経営者がリーダーシップを発揮しすぎてしまうケースだ。

 大事なのは、DXを推進するプロジェクトにおける経営者のリーダーシップのあり方だ。つまり、有意義な目的をしっかりと設定して、プロジェクトメンバーと共有すること。さらに、経営者がリーダーたちにできるだけ心理的に安全な環境を与える。この2つができればいい。

 まず経営トップが有意義な目標を掲げれば、それに基づいてチームは具体的な目標を立てていく。そして、経営トップとしっかり合意を形成していくことが求められる。

 では、心理的に安全な場はどうやって作るか。それはゴールの共有と、お互いへのリスペクトだ。そのために経営トップはチームメンバーに、どういうところを認めて、期待しているかを伝えるといい。

 その他、見える化も心理的安全性には欠かせない。人は、どんなルールで、どこまでやっていいかわからないと不安になる。活動のグランドルールを設定して共有し、チームはトップとプロセスも共有する。そうした前提が心理的安全性につながり、伸び伸び活躍できる要因になる。スポーツと同じで、伸び伸びとプレーするためにルールが必要だ。

 DXは動態的なものであり、決まっている手順を間違いなくやりとげれば、ゴールにたどり着けるというものではない。ルーティン化も、マニュアル化もされていない。今回紹介したようなファシリテーション能力のある人材を登用しつつ、DXはやりながら答えを作っていくものだと認識して、進めていってほしい。