世界有数の大手企業にとって、国際税制政策はまさに「願いごとは慎重に」の格言通りだろう。欧州諸国はここ何年も税制改革を求めており、バイデン米政権の提案は、ほぼ欧州諸国の期待に応えるように見える。米ハイテク大手は、納税額が予測可能になるなら、増税も喜んで受け入れるとの立場を示してきた。その主張が本物か、今後試される展開になるだろう。ホワイトハウスが提示した2兆3000億ドル(約250兆円)のインフラ投資計画は、向こう15年の税収拡大により原資を手当てする計画だ。その税収押し上げの柱となるのが、企業を不利な立場に置くことなく、外国への事業移転の動機を与えないよう確実にする国際税制改革だ。米国の提案は、欧州諸国の政府が求めていた重要な2つの改革を盛り込んでいる。1つは公正な競争環境の確保を目指した国際最低税率の導入。もう1つは課税権の再配分で、物理的な資産の所在地にかかわらず、大手企業が収益を上げている当該国への納税を増やすことを目的としている。