米国株は史上最高値を更新
米クレジットの安定は株高を示唆
S&P500種株価指数は4月9日、終値ベースで史上最高値を更新した。新型コロナウイルスのワクチン普及への期待感の高まり、バイデン政権による1.9兆ドルのコロナ対策の成立、米連邦準備理事会(FRB)のハト派スタンスの継続などが、理由として挙げられる。
しかし今年1-3月期の米国株は、上下動で推移した。米長期金利が昨年末の1%以下から1.7%台まで大幅に上昇したほか、一部銘柄の取引を巡ってレバレッジ取引への警戒感が強まったことなどが米国株の一時的な下落要因になった。
米国株が上下動したのとは対照的に、1-3月期の米クレジット市場は安定していた。過去、米国株が本格的な下落局面に入るタイミングでは、米クレジットスプレッド(米BBB社債金利と米10年国債金利の差)が拡大する関係がある。1-3月期の米クレジットスプレッドは、2.1%前後と低水準であり、株価下落が一時的なことを示唆していた。4月に入ると2%を割り込み、コロナ禍前の水準まで低下している。
米クレジット市場が安定している理由として、3点が考えられる。第一に、企業業績の回復期待だ。新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだこと、米大型景気対策の成立、原油価格の上昇などは、企業の信用リスクの改善や格上げ期待につながっただろう。
第二に、米クレジット市場への資金流入が続いたことだ。米長期金利は1.7%台まで上昇したが、歴史的には低金利だ。米国債金利よりも高い利回りを追求する投資家は、クレジットリスクを積極的に取ったのだろう。米国投資信託協会(ICI)のデータによれば、低格付け債(ハイイールド債)に投資しているとみられる投信に、今年1-3月期で約560億ドルの資金流入があった。これは、四半期ベースでみて2007年以降で最大の資金流入だ。
第三に、FRBの政策への期待だ。FRBは2020年3月に社債リスクを取ることを発表し、米クレジット市場を大幅に改善させた。FRBが社債のリスクを取るのは初めてだったほか、FRBが社債の最後の買い手として意識されたことなどが、米クレジットスプレッドの急激な縮小に寄与した。FRBの社債買入プログラムは昨年12月に終了しているが、クレジット市場が悪化すれば、再開されるとの期待感もあるだろう。