日銀の調査によると、2007年度通年で、国内銀行の貸出金残高は約404兆円と1.4%増加したものの、中小企業向け貸出金残高は約182兆円と3年ぶり1.8%減少した。
貸出金全体が増加した背景には、昨年の年央まで景気の回復基調が続き、企業の資金調達が増加傾向を示したことに加え、金融機関の積極的な営業活動が奏功したことがある。問題は、資金調達手段が限定され、しかも、原油や穀物価格の高騰で、一般的に経営状況が苦しくなりつつあると見られる、中小企業向け貸出しが減少傾向を辿っていることだ。
こうした現象は今回に限ったことではない。景気上昇の傾向がピークアウトし企業倒産が徐々に増加すると、金融機関は、信用状態が相対的に良好な大企業などに貸出しをシフトする傾向が強まる。これは、不良債権を増やしたくない金融機関からすれば、当然の行動と言えるのだろうが、資金繰りに苦しい中小企業側から見ると、かなり厳しい現実といわざるを得ない。足許で、景気減速の鮮明化に伴って、また“いつか来た道”を歩み始めているようだ。
景気減速により
銀行の審査基準が厳格化
銀行にとって、貸出金は、一般企業の売上げにも相当する大切な収益源である。そのため、銀行は、貸出金をできるだけ増やすことを念頭において営業活動を行なっている。しかし一方で、積極的な営業活動で積み上げた貸出金が焦げ付いたり、不良債権化することは銀行経営にとって致命的な打撃になることもある。それは、90年代から2000年代初頭にかけて、わが国の銀行経営者は身にしみているはずだ。その結果、不良債権化しないような優良な貸出しを行なうことが、最も有効な業務活動ということになる。そうした活動を内部で支えるのが行内の審査制度だ。
審査制度のスタンスは、いつも同じとは限らない。景気が良いときは、どこの企業でもそれほど苦労なく利益を上げることができる。十分な利益が上がるのであれば、貸出金が焦げ付く可能性は低下する。そのため、企業に対する与信審査は比較的緩やかになる。審査を厳しくしすぎて、収益チャンスを逃すことは得策ではないからだ。