とりわけ第一列島線は、日米が有事の際にこの中で活動するリスクが高くなっている。そこで米国はPDIに基づき、同盟国の協力を得て、まずは第一列島線内の安全を確保して主導権を奪回して抑止力を構築することを考えている。

 具体的には、第一列島線に沿って長距離精密打撃システムを配備して、中国本土のミサイル・空軍力に対抗できるようにする。

 さらに第二列島線にあるグアムにはイージス・アショアを含むミサイル防衛やレーダーを含むIAMD(統合防空ミサイル防衛)を配備して、グアム防衛態勢を強化して米本土防衛の前線拠点を作る計画だ。

 バイデン政権は、日本などとの同盟関係を強化しつつ、インドを巻き込んだQUADによる多国間協力を進めることを、インド太平洋の外交安全保障戦略の最大の柱にしている。

 日本にとっても、中国の空母が常時、第一列島線の外に出て活動するようになれば、新たに日本列島の南太平洋側から脅威を受けることになる。台湾や南西方面の安全を含めて、日本にとってPDIとの連携は死活的に重要だ。

 ただ、この戦略を進めるにはまず、長距離レーダー網や各種の衛星システム、ドローン、ミサイルを搭載したイージス艦や空母、原潜、戦闘爆撃機などを一つのシステムで同盟国と一体的に運用する必要がある。

 特に、極超音速ミサイルの監視や発射の探知、追跡ができるよう低高度の衛星コンステレーションを多数、配備して対応する必要がある。

 だが、精密攻撃ミサイルはまだ米国で開発中だし、配備だけでも大変な作業だ。そのための国防予算も必要だし、何よりも日本を含む同盟国の強力な支援と援助が必要だ。

 米国にとって、日本はQUADの中核となってPDIを推進していく重要な位置にあり、日本にそうした役割を果たすことを望んでいる。

「台湾有事 6年以内」証言
習主席「4期目」のタイミングと一致

――台湾海峡ではこのところ、中国空軍機の領空侵入が頻繁に行われています。米軍のデービッドソン・前インド・太平洋軍司令官が、台湾侵攻が6年以内に起こり得ると議会で証言しましたが、その可能性をどう考えますか。

 中国の習近平主席が来年、3期目に入るのは確実視されているようだが、習主席にとって次の目標は2027年の全国人民代表者会議(全人代)で4期目が承認されるかどうかだ。

 党内長老からも4期は長すぎるという批判があるといわれている。習氏が4期目を確実にする一番大きなテコは、これまでの指導者にできなかった民族と国家の統一、つまり「台湾統一」を実現することだろう。