欧州ビッグクラブと関係深いJPモルガン
米国式に倣い、クラブ固定で安定収入狙う

 現存するヨーロッパチャンピオンズリーグとほぼ同じ方式として対峙する一方で、大きく異なっているのが、参戦クラブの固定化だ。昇降格がない=一定収入の保証となり、実際に各クラブには3億5000万ユーロ(約457億円)に上る参加ボーナスが約束されている、と報じるヨーロッパのメディアもあった。

 金額に関する情報が錯綜した中で、いずれにしても巨額となる運営資金の源泉を探っていくと、アメリカの金融大手、JPモルガン・チェースの存在に行き着く。彼らの莫大な融資が担保されていたからこそ、昨春から続く新型コロナウイルス禍で未曽有の減収を余儀なくされていたビッグクラブが、いっせいに飛びつく状況を生み出した。

 もっとも、ここで素朴な疑問が残る。ヨーロッパサッカー界に生まれようとしていた新たな動きに、今年1~3月に143億ドル(約1兆5600億円)と四半期として過去最高の最終利益を上げた、アメリカのJPモルガンがなぜメインスポンサーとして関わっていたのか、だ。

 接点の一端はイングランドの名門、マンチェスター・ユナイテッドに見られる。2013年から同クラブの実質的なトップを務めているイギリス出身の実業家、エド・ウッドワードCEO兼上級副会長は、JPモルガン・チェースのM&A部門でらつ腕を振るったキャリアを持つ。

 マンチェスター・ユナイテッドは05年までに、アメリカのグレイザー家によって買収された。その過程でアドバイザーとして、JPモルガン・チェースが持つ豊富なノウハウを提供したウッドワード氏が、買収完了後にマンチェスター・ユナイテッドへ転職した。

 この一件にとどまらず、JPモルガンは早い段階からヨーロッパサッカー界を、投資に見合ったリターンが望める新たな標的に据えて関係を深めてきた。現在はスーパーリーグ創設で合意したクラブの多くを顧客に持ち、特に中心的存在を担うペレス会長とは昵懇の仲にあるとされている。

 加えて、今ではマンチェスター・ユナイテッドに加えてリバプール、アーセナル、ミランのオーナーをアメリカ人の実業家が務めている。アメリカ式プロスポーツの運営方式をヨーロッパに導入する舞台が整った状況で、新型コロナウイルス禍が背中を押した。

 アメリカ式プロスポーツとは、野球のMLBやバスケットボールのNBAに代表される昇降格のない舞台が前提となる。00年代初頭から新たなリーグ戦の必要性を訴えてきたペレス会長も、JPモルガンという後ろ盾を得て、ついに時が来たと先頭に立ったのだろう。