ソフトウエア開発が得意な米企業
微細なモノ作りが得意なTSMCは後工程も強化

 足元、米エヌビディアやアップルは自社で開発したチップを発表している。エヌビディアが発表したCPU(中央演算処理装置)の「Grace(グレース)」は、回路線幅5ナノメートルのラインで生産される予定だ。委託先は判明していないが、いち早く5ナノメートルのラインを稼働させたTSMCが生産を担うと考える半導体の専門家は多い。その状況は、CPUなどの供給によって世界の半導体産業を総合的にリードしてきた米インテルからTSMCに、半導体産業の盟主の地位がシフトしているように映る。

 見方を変えれば、米国企業は、スピーディーにソフトウエアを開発し、新しい発想を実現することが得意だ。それを支えるのが、多様な人種を抱える社会だ。その一方で、確実に動作する微細なモノを作るということに関しては、多様な価値観より組織の集中力が大切だ。その点に関してTSMCが強みを発揮している。

 TSMCは生産能力引き上げなどのために2021年の設備投資額を300億ドル(約3.3兆円)に積み増した。重要なことは、TSMCがファウンドリー事業の強化に加えて、後工程と呼ばれる半導体生産プロセスも強化していることだ。後工程とは、シリコンウエハー(基盤)上に形成されたチップを切り出し、樹脂ケースに入れ(パッケージング、封止などと呼ぶ)、動作確認などを行う工程を指す。一連のプロセスをフローチャートで示すと以下の通りだ。

図版:フローチャート
※各種資料より筆者作成  拡大画像表示

 インテルは設計・開発から後工程までを自社で行う垂直統合型メーカーだ。なお、世界の後工程市場のシェアは、台湾が50%超、中国が約20%、米国が15%程度(2018年)と、ファウンドリー市場と同様に、台湾企業の競争力が高い。それに加えて中国企業もシェアを獲得している。世界経済への半導体供給地としての台湾をめぐる地政学リスクは一段と高まり、IT先端分野での米中対立は先鋭化するだろう。