三菱地所 移転前(写真右上・大手町ビル)と移転後(大手町パークビル)の本社オフィスの様子 写真提供:三菱地所三菱地所 移転前(写真右上・大手町ビル)と移転後(大手町パークビル)の本社オフィスの様子 写真提供:三菱地所
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「決裁フローそのものの変更はガバナンスの観点からも難しいが、決裁の電子化はできている。さらに契約業務でスピードアップを図るなら、先方とのやり取りで紙をなくして、メールなど、データで完結するのが一番効果的だと考えている」(柴橋氏)

 ただし、不動産契約では定期建物賃貸借契約(定期借家契約)など、まだ書面の交付が法的に義務付けられているものがある。

 このため全面的な契約の電子化はまだ実現できないのだが、柴橋氏は「10ある業務のうちの5を電子化し、残った5のアナログ業務をさらに1に減らすべく、効率化できる部分を探す動きが最近、加速している」と言う。また官庁でもデジタル化へ向けた規制緩和の動きがあることについて、「法的に決まっていた(紙の)業務も減らせるに越したことはない」と話す。

「現状、紙で契約業務を行っているところも、確かにその文書における決裁権者本人による合意が認証できるなら、まだまだフローは電子化できるのではないか。(社としての見解ではないが)電子化がより一層進むことでさらなる効率性向上が望めるのであれば、個人的にはありがたい」(柴橋氏)

配送スタッフら1000名の雇用契約を電子化
業務の手間・時間を大幅削減

 配送伝票をはじめ、紙を使った業務が根強く残る物流・配送の世界で、まずは大量にある雇用契約の電子化を図ったのがココネットだ。ココネットは2011年の設立。買い物代行やネットスーパーなどの食品・日用品宅配、配送員による見守りなど、買い物弱者の問題を解消するために“ラストワンマイル”の配送サービスを提供する。

ココネット経営企画室室長 萩原哲也氏ココネット経営企画室室長 萩原哲也氏

 ココネットで契約システムの導入を検討し始めたのは、2019年6月ごろのこと。ココネット経営企画室室長の萩原哲也氏によれば、同社には法務部門はなく、契約書の確認は顧問弁護士に依頼するか、内容の分かる担当者が行い、個々の現場で製本、ファイリングして保管していたそうだ。

 ココネットはグループ会社を合わせると1000名以上のスタッフを抱えており、そのうちの多くがアルバイトだ。このため契約の95%を雇用契約が占め、月間に締結・管理する数は30~40件に上る。

「紙の契約書では業務のスピードが上がらず、契約管理の面でも不安があった」(萩原氏)とのことで、これらの課題を解決するツールとして契約管理システムを活用し、契約領域のDX推進を決めた。

 現場で契約管理の実務を担当するココネット グループ管理本部の武藤博子氏は、最も困っていたのは、紙での作業時間と管理の煩雑さだという。