ココネット グループ管理本部 武藤博子氏ココネット グループ管理本部 武藤博子氏

「特にコロナ禍では在宅勤務になったが、紙のままであれば契約業務のために出勤しなければならなかった。ほかにも、書類が届いたか届いていないかといった確認の時間も軽視できなかった。物理的作業に時間が取られていたのも大きい。契約書の印刷、出力した書類のチェック、封筒への封入、投函など、単純作業の積み重ねでかかっていた時間が、契約管理システムを導入したことで一気に削減でき、心理的な負担の軽減も加味すると、体感では7~8割、作業を削減できた感がある」(武藤氏)

 また作業時間の削減以外でも、「スタッフからの契約書の返送が早くなり、返信率も上がって、契約が正しくスムーズに行えるようになった」(武藤氏)という効果もあったそうだ。

「以前はスタッフの側でも返信書類を用意して、封入して郵送する手間があり、添付書類の不備もあった。早くても返送までに1週間はかかっていたものが、今は契約書作成から締結まで1日で完了することもある」(武藤氏)

 システム導入に当たっては、グループ会社のうちでも小規模・少人数の数社で先行して導入し、試行した上で、ココネットやほかのグループ会社にも展開している。

「契約管理システムの導入で、契約周りのDXのうち、管理と締結部分は電子化できた。今後は『秘密保持契約』など定型に近い契約については、AIによる内容チェックの効率化が進められるようなサービスがあれば、導入を検討してみたい。雇用契約に比べれば数は少ないものの、現在は毎回契約内容の弁護士確認を行っているので、一部の契約でも(半自動的に)判断できるようになれば、意思決定や営業の場面でのスピードアップにもつながる」(萩原氏)

 法人同士の契約締結においては、相手企業の理解を得ることも必要となってくる。萩原氏は「電子締結は増えているが、紙の契約も根強く残っている。ハンコ出社もなくなっていない。ここを変えるには世の中の文化形成の影響が大きい。社会の流れでデジタル化が進めば、全体として良くなるのではないか」と語る。

 契約業務をはじめ、DXの推進は「経営陣の舵取り次第」と萩原氏は言う。

「コロナ禍はもちろん大変だが、リモート勤務が広がり、ハンコもなくなってくるなど、世の中が変わったことは確かだ。今までならやらなかった変革も動き出したように感じる」(萩原氏)

「DX推進では、システムの導入などでコストは絶対にかかるので、そこで止まってしまうことも多い。また業務プロセスの整理などは最初に力が要るが、力を出すためのその時間がないときもある。だがコロナ禍の影響で、その進み方がとてもスムーズになった。変革を『やらなければならないこと』と皆さんが感じるようになったのではないか」(武藤氏)

 これまでは「慣習」やコスト面などの問題を理由に、なかなか進まなかった法務・契約領域のDX。コロナ禍でリモートワークや業務の効率化を進めなければならない今こそ、非効率さに悩まされていた担当者は、経営トップを説得し、法務・契約領域のDXを推進するチャンスではないだろうか。