今からおよそ300年前、欧州の資本家たちはフランスと英国の政府から交易特権を付与された新貿易会社を巡り、その将来性に胸を膨らませていた。イギリスの「南海会社」とフランスの「ミシシッピ会社」の株価は急騰を演じた後、1720年に暴落。憤然とする投資家たちの資金が吹き飛んだ。目下の金融市場で起こっていることに経済史家が眉をひそめる背景には、そうしたエピソードがあるのだ。金融街ではまたしても、新手の投資方法を求める不可解なブームが起こっている。暗号資産(仮想通貨)ビットコインの価格はここ1年で6倍余りに上昇した。一方、調査会社ディールロジックによれば、特別買収目的会社(SPAC)と呼ばれる「空箱」会社は今年に入り1000億ドル(約11兆円)余り調達している。SPACは証券取引所に上場し、標的の企業を買収する。投資家はさらに、美術品や有名人のサインのように、オンラインのコレクターアイテムに発行されるデジタル証明のNFT(非代替性トークン)もさかんに求めている。