しかし、いかに日本の政治が暗愚であって、政府・自治体が硬直的であっても、ワクチンの接種は進むに違いない。米国の経済・社会が現在迎えているような改善状況は、希望的には半年、慎重に見ると1年後には、日本にあっても見えてくる変化である公算が大きい。

 この「ワクチン・ラグ」は、全面的に頼ることができるほど確実ではないとしても、予想のファクターとしては相対的に確度の高い要因ではないだろうか。

 今後、コロナの変異株の感染がより一層強い不安を社会にもたらしたり、緊急事態宣言の延長を受けた経済の下方屈折が懸念されたりした場合に、株価が下落する可能性がある。そのとき、「ワクチン普及による後の改善」を考えると、投資のチャンスになる可能性がある。

 なお、日本企業に影響の大きい中国と米国の経済が共に好調なので、「巣ごもり需要」で追い風を受けている企業以外にも、少なからぬ製造業の企業は業績の好調が予想される。日本株は、大国の景気に左右されやすいローカル国の景気敏感株的性格を持つ。

 もちろん、投資の意思決定は個々人のリスクと責任で決めてほしいが、個人でできる経済状況改善の可能性の一つとして、頭に入れておいてほしい。

「ワクチン・ラグ」を利用した
もう一つのチャンスはリアルなビジネス

 もう一つは、リアルなビジネスにおけるチャンスだ。

 再三の緊急事態宣言で、多くのビジネス主体が「資力」と「気力」を失って、店舗を閉めたり、事業継続を諦めようとしたりしている。特に、今回の緊急事態宣言は長引く可能性があるし、変異株という新たな脅威が登場したことに対する心理的影響もある。

 これらに伴って、これまでは手に入りにくかった好立地の店舗不動産に空きができたり、有能な人が働く場所を失ったり、事業そのものが売りに出されたりすることが増えるはずだ。

 ワクチンが普及しても、これまでと全く同じように、例えば飲食店のビジネスモデルが成功できるとは思えない。ただ、顧客側の衛生観念の変化や感染症が再び広がる可能性を考慮したビジネス展開を考えると、多くのビジネスチャンスがあるのではないだろうか。

 それ以外のビジネスでも、また人の採用や事業の買収にあっても、当面しばらくの状況は、平時ではなかなか得られないチャンスをコロナ禍が提供してくれる可能性が大きい。

「ワクチン・ラグ」を利用する点では、金融政策や市場の気まぐれに影響されやすい株式投資よりも、リアルなビジネスの方にこそより確実なチャンスがあるかもしれない。

 将来、誰にも後ろ指を指されないような成果を上げて、「コロナはチャンスだった」と言える人が、読者の中から多数出ることを願っている。