自閉症患者との関係について
~新生児糖尿病がともす希望の光

Q:DEND症候群の神経症状について詳しくお願いします。

A:DEND症候群は、新生児糖尿病の病型の中で最も重い症状を呈します。糖尿病に加えて、脳神経症状として精神発育遅滞や低筋力、てんかん発作などを発症します。糖尿病発症直後からSU剤を使用することで、これらの神経症状がある程度まで改善することが確認できています。特にてんかんに関しては高い確率で改善します。低筋力に関しても自力で歩行が可能になります。

 精神発育遅滞に関しては無治療の患者さんに比べると雲泥の差で改善がみられますが、完全な回復とは言えず、患者さんもご家族もいろいろな困難に直面しております。近年、SU剤治療によってある程度回復した患者の発育遅滞の症状が自閉症症状に類似していることが、世界各国から報告されています。

 自閉症はその発症メカニズムも明らかではなく、治療となると難しい面がたくさんあります。ただ、新生児糖尿病の病型の中でDEND症候群ほど神経症状が重症でないものに、中間型DEND症候群(iDEND:intermediate DEND syndrome)があります。

 イギリスでこのiDEND症候群の6歳の女の子にSU剤治療を開始したところ自閉症症状が著明に改善しました。従来の自閉症の患者からは考えられないほどの改善でした。DEND症候群やiDEND症候群の子供たちの神経症状からは自閉症の解明や治療の上でも学ぶものがたくさんあるのではないかと思います。

Q:日本では患者会はあるのですか。

A:残念ながらまだです。イギリスでは私の元上司が患者会の結成を主導し、患者さんに手厚い保護を与えました。治療研究の資金集めや患者の家族同士相談できるコミュニティーを作りました。私はこの疾患の研究者として患者にも家族にも接し、苦しみを知り、自分の報告した治療法の限界も知り、何とかしなければと常に思い続けています。

 多くの患者さん、ご家族がこの難病に苦しんでおられます。一人でも多くの皆さんにこの病気の存在を知っていただき、私たちの研究の取り組みを応援していただけないかと思っております。

 アメリカのABC放送、イギリスではBBC放送がそれぞれテレビで取り上げたことで、社会に大きく知られることになりました。日本でもこのダイヤモンド・オンラインの記事によって、患者会結成や、治療指針の充実に向け大きな一歩を踏み出す契機になれば本望です。

(監修/福島県立医科大学病態制御薬理医学講座 下村健寿主任教授)

しもむら・けんじゅ/福島県立医科大学病態制御薬理医学講座主任教授。1997年福島県立医科大学卒業。群馬大学にて臨床医を経て、2004年より英国オックスフォード大学研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授から8年間薫陶を受ける。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。日本帰国後、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究中。現在も月に200人近い糖尿病患者を診察する現役臨床医でもある。近著に『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)。