感情をラベリングできる子どもは落ち着きがある

この寛大な父親は

(a) 自分の気持ちにラベルを貼って分類するのが得意で、

(b) 自分の気持ちに名前をつける方法を娘に教えるのもうまい。

 自分が悲しいときの気分をよく把握していて、それを苦もなく言葉で表現できる。わが子の胸が悲しみで張りさけそうであることを察し、それを言葉で表現するやり方を教えた。それに、よろこび、怒り、嫌悪、心配、恐怖など―幼い娘が経験するあらゆる感情―を教えるのもうまい。

 このように感情にラベルをつける習慣が、幸せな子どもを育てている親に共通して見られることが、研究によってあきらかになっている。感情に名前をつける親の習慣に触れて育った子どもは、自分を落ち着かせるのが得意なうえ、目の前の作業によく集中できるし、友だちともうまくやっていける。ときには、なにを言うべきかわかっても、なにをすべきかがわからないこともある。それでも、感情を言葉であらわすだけで充分な場合もあるのだ。

 父親が娘の気持ちに寄り添い、その気持ちを言葉で表現したところ、幼い娘はしだいに気持ちを落ち着けていった点に着目してもらいたい。これは科学者の研究でもよく見られる現象で、実験室で再現することもできる。

 感情を言葉で表現すると、子どもの神経系を鎮める効果があるのだ。これはおとなにもあてはまる。感情を言葉で表現する「感情のラベリング」には、たかぶった気持ちを落ち着かせる効果があるのだ。

 研究者のキャロル・イザードは、感情を言葉で表現する指導をおこなわない家庭の子どもの場合、言葉を使う神経系と言葉を使わない神経系が完全に連結しないまま、不健全なかたちで統合することを示した。

 自分が感じている気持ちにラベルを貼ることができないと、子どもは生理的反応がもたらす不協和音によって混乱しても、そこから脱出できなくなるのだ。

(本原稿は『100万人が信頼した脳科学者の絶対に賢い子になる子育てバイブル』ジョン・メディナ著、栗木さつき訳の抜粋です)