あなたは何歳まで働くことをイメージしていますか?60歳、65歳、70歳…あるいは生涯現役でしょうか。もしかしたら、これから先、70歳を超えても定年を迎えられないかもしれません。定年がどんどん遠のく時代、私たちは「働き続ける」場合と、「働けなくなった」場合の2パターンを想定し、準備する必要があります。特に働けなくなった場合は、「資産」が重要です。(社会保険労務士 井戸美枝)
サザエさん時代の定年は55歳…今や「定年70歳」
現在、日本の社会保障制度は「65歳」まで働くことを前提として作られています。年金は原則65歳から受け取ることができますし(※1)、企業に対しては65歳までの雇用を確保する義務が定められています(※2)。
しかし、今年4月、高齢者が働ける環境整備を目的とした「高齢者雇用安定法」という法律が改正され、企業は「従業員が望めば70歳まで働けるようにする努力義務」となりました。
あくまで「努力義務」ですので、全ての企業が必ず実施するわけではありません。しかし、今後、多くの企業が、定年を迎えた従業員を再雇用する継続雇用期限を70歳まで延ばしたり、退職した従業員と70歳まで業務委託契約を結んだりする可能性があります。定年そのものを廃止する企業もあるでしょう。
1950年代にさかのぼると、多くの企業の定年退職(男性)の年齢は55歳でした。
1951年連載開始の漫画「サザエさん」の波平さんの年齢は54歳。今の50代の方と比べると、ルックスも10年程度年配の印象を受けますね。1960年の男性の平均寿命は65.32歳ですので(女性は70.19歳)、引退してから10年程度で亡くなる方が多かったと考えられます。
一方、2019年の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳。退職から亡くなるまでの期間という点だけで考えると、定年が70歳まで引き上げられることは、さほどおかしなことではないでしょう。
加えて、今も日本の平均寿命は延びています(男女共に8年連続で平均寿命の最高を更新)。あなたの年齢が20~30代であれば、リタイアする年齢は70歳を超える可能性もゼロではありません。
では、この「定年70歳」時代に、私たちはどう対応すれば良いのでしょうか。
当たり前かもしれませんが、「働けるだけ働く場合」と、「働けなくなった場合」の2パターンを考えておくことが大切です。
※1 60歳まで「繰り上げ」、70歳まで「繰り下げ」(2022年4月以降は75歳まで)を自分で選択することができます。
※2 定年退職を60歳として設定しているケースでも、65歳まで継続雇用などで働く場を提供する義務があります。