「珠江デルタ」と「長江デルタ」を引っ張る「一線都市」

 放送後、番組はそれなりに評価された。しかし、しばらくして、ある新聞の記事に書かれた「珠江デルタ」と「長江デルタ」という表現を目にして、私は悔やんだ。

 私が、「広州と蘇州が代表する2つの地域」という表現で伝えたかったのは、まさに「珠江デルタ」と「長江デルタ」というエリアを指すのだ。表現のわかりやすさを考えると、「珠江デルタ(=広州を中心とした周辺地域)」と「長江デルタ(=蘇州を中心とした周辺地域)」という表現の方が勝っているだろう。

 それ以降、「珠江デルタ」と「長江デルタ」は、二つの強力なエンジンとして中国経済を引っ張って躍進してきた。

 しかし、ここまで発展してきた中国経済のさらなる発展をもとめるためには、珠江デルタと長江デルタという二つのエンジンだけでは、まだパワーが足りない。

 だから、広域エリアの視点から中国経済を語る傾向が強まっているなかで、エリア全体を引っ張る機関車的な役割を果たす「一線都市(*)」に対する注目度も高まってくるのだ。

*全国的な政治活動や経済活動などの社会活動で重要な地位にあり、波及力・牽引力をもった大都市

 かつて私は「中国で5番目の『一線都市』になるのは杭州か蘇州か武漢か」で、「中国市場を分析するとき、非常に重視しているキーワード」として一線都市(北京、上海、広州、深セン)を紹介した。この4都市は、頭文字をとって、「北上広深」と称されることもあるくらい知名度を得ていた。

 当時、広州の地位はもう不動と思う人も多く、人々の関心の的は、5番目の一線都市になるのが杭州か蘇州か武漢かという点に移っていた。