広州は、中国国内での一線都市の地位を守れるか

 広州の後退をめぐって、いろいろな議論が繰り広げられている。

 権力の北京、金融の上海、科学技術の深セン、インターネットの杭州といったイメージが定着しているのだが、広州の位置付けはいまだにはっきりしない。「それが敗因だ」と見る人もいる。

 また、「香港の地位低下による広州への波及効果もあった」との指摘も聞かれる。「一線都市入りをめぐる激しい攻防戦が繰り広げられているなか、広州は一時的後退にすぎず、杭州に追い越されたという結論を出すのはまだ早い」という声もある。私もこの意見を支持している。

 しかし、広州は鮮明な位置付けを示さないと、一線都市の地位を守り通せなくなる可能性がある。2020年中国主要都市のGDP関連の統計を見ると、都市GDPランキングにおいて広州は僅差で重慶に勝ち、4位の座を守り抜いた。しかし、蘇州も追い上げてくるのを見て、これから広州が地位防衛戦で勝ち続けられるのか、疑問を抱いている人も多い。

 こうした都市間競争の激しさに見なれた目で日本国内を見てみると、都市間競争ののろしさえ見られないほどの静かさとのどかさに、一瞬、時間が停止しているのではないかという錯覚を覚えた。「日本の昨年度のGDP、4.6%減」といったニュースを目にすると、思わずため息が出てしまう。

 コロナ禍の影響もあったが、それ以外の原因もあったはずだ。都市間競争があまりないのも、その一因ではないかと私は思う。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)