セクシー素数とは?

 13と17のように差が4の素数同士を「いとこ素数」と言う。ちなみに3と5のように差が2の素数同士は「双子素数」、5と11のように差が6の素数同士は「セクシー素数」と呼ばれる(後者は、ラテン語では6を「sex(セクス)」と言うことに由来する)。

 素数自体が無数にあることは、古代ギリシャの時代に証明されているが、双子素数もいとこ素数もセクシー素数も無数にあるかどうかはまだわかっていない(多くの数学者は無数にあるだろうと予想している)。

 ところで、最も小さいセクシー素数である(5、11)から始めて、さらに6ずつ増やしていくと「5、11、17、23、29」の5つの数はすべて素数であることに気づく(次の35は素数ではない)。このように、登場する数がすべて素数であり、しかも隣同士の数の差が一定である数の列を「素数等差数列」と呼ぼう。

「素数等差数列」は他にもある。「7、37、67、97、127、157」や「199、409、619、829、1039、1249、1459、1669、1879、2089」も素数等差数列だ。

 素数等差数列の長さはいったいどこまで長くできるのだろうか? これは古くから多くの数学者を悩ませてきた難問である。そもそも大きな数が素数かどうかを判定するのはとても骨が折れる。長い素数等差数列を探すには大変な計算が必要なのだ。

 コンピュータの時代になって、ようやく記録が伸びるようになった。2004年には23個の素数から成る素数等差数列が見つかっている。その最初の数は「56211383760397」、隣同士の数の差は「44546738095860」というものすごい数列だ。

 その一方で、同じ2004年に数学界を揺るがす大発見が報告された。なんとオーストラリアのテレンス・タオ氏がイギリスのベン・グリーン氏と共に「素数の等差数列はいくらでも長くできる」というとてつもない定理を証明してしまったのだ(グリーン・タオの定理)。

 今のところ、実際に見つかっている素数等差数列の最長記録は27個である(2019年に見つかった)。現代のコンピュータを使っても記録更新は至難の業なのだろう。しかしグリーン・タオの定理によると、1億個とか1兆個の素数だけでできている等差数列も必ず存在する。

 一見無秩序に見える素数の並びの中に、このような規則性が潜んでいることは驚き以外の何ものでもない。タオ氏は、この功績を認められ、2006年に31歳の若さでフィールズ賞(数学界最高の賞)を受賞している。