若手たちは全部聞いたあとで、気になるところへの意見をそれぞれ、話し始めます。

「ボクは、前提はこう考えました」「優先順位での一番は、違うんじゃないですか」「ワタシは戦略って他にもある気がします」「それより、もともとこの問題って……」

 伝えるときには、一段ずつ、階段を一歩一歩上りましょう。

 いっぺんに全部進もうと思うと、逆に失敗します。急がば回れ。「重み」や「差」で、1つひとつ区切って話してその段落ごとで、決着をつけながら進みましょう。

短く話す。言い直さない

 ヒトが一度に受け止めきれる情報量には限りがあります。

 ヒトの脳には受け入れた情報を一時的にプールする「ワーキングメモリ」と呼ばれる機能があり、その容量は極めて限られていることがわかっています。

 15秒以内に、90%の情報が忘れ去られ、それを超えて保持できるのは、数字であれば7つ、文字では6つ、単語では5つしかありません。

 それらがうまく塊になっていれば、それごとにまとめられていくので、一度に処理できる情報量は上がります。しかし、そうでなければ脳のワーキングメモリはあっという間にあふれてしまいます。

 特に話し言葉の処理は大変です。相手の発した音を単語に変換し、そこから記憶と照らし合わせながら意味を抽出し、前後を参照しながら文章の意図を理解するという作業は、大変高度な処理なのです。

 文章が長いとその保持にワーキングメモリがとられ、文の理解や処理が回らなくなります。長々話すと、それだけで相手は「何言われているのかわからない」状態になってしまうのです。

 なのに、相手の反応が悪いと感じると、ヒトはどんどん発言を重ねます。

 しかも同じような文章を、ちょっとだけ言い直してみたりします。例え話や事例を挙げるなら、まだいいのかもしれません。でも、似たような文章を重ねられても、相手は混乱するばかりです。

「5ワード以下で区切りながら、短く話す」「言い直さない」が鉄則です。言い直すくらいなら、同じことを繰り返しましょう。それがイヤなら、だまって相手が理解するのを待ちましょう。沈黙に、耐えながら。