お客様の無意識的な「変化」に目をこらす

 例えば、こんなことがありました。

 そのときお目にかかったお客様は、知人から紹介された31歳で独身のサラリーマンでした。

 僕は、その方と面会するときに、「保険は若いうちに入ったほうが断然メリットがあることを伝えるのがいいだろう」と思っていました。

 しかし、少しお話すると、紹介してくれた知人への“義理だて”のために僕に会っていることがすぐにわかりましたし、「若いうちに入るメリット」に触れても全く興味を示されませんでした。「取りつく島もない」という感じだったので、保険の話で深追いせずに、人としてつながっておくだけでいいかなと思っていました。

 ただ、今後、結婚されたときなどに、ご連絡をいただけるかもしれないと考えて、念のため、僕が保険に入った理由を話してみることにしました。

 そして、「自分も当初は保険には全然興味がなかったけれど、自分に何かがあったときに、両親の老後の面倒を見る人がいなくなるのが心配になって、高額の保険に入ることにした」という話をしたときに、彼の表情に明らかな変化がありました。それまではほとんど無表情だったのですが、目に力がこもったように見えたのです。

 特に、両親が事業に失敗して、老後の蓄えがほとんどないことも包み隠さず話したときには、彼は、「それは心配ですね……」と深い共感を示してくれました。これで僕は直観しました。きっと、この方もご家族のことで心を砕いていることがあるに違いない、と。

“超一流の営業マン”がお客様と話すときに、意識を集中させている「意外なこと」とは?Photo: Adobe Stock 写真はイメージです。

営業マンが「自己開示」するから、
お客様もデリケートな話ができる

 そこで僕は、「家族のことは心配ですよね……」とおうむ返しをしました。

 すると、お客様はしばらく押し黙っていらっしゃいましたが、「実は……」と語り始めました。

 実は、その方の弟さんに障害があって、小さい頃からずっと面倒をみていたけれども、自分は就職のために東京に出てきて、地方の実家で年老いつつある両親と弟さんだけで暮らしている。いまは自分が仕送りして生活を支えているが、自分に何かあったら弟がどうなるか心配でならないとおっしゃいます。

 そこで、僕は、弟さんのために、安い掛け金で高い保障が受けられる保険があることをお知らせしました。すると、ものすごく喜ばれて、すぐに具体的な保険の設計をしてほしいと依頼してくださいました。しかも、その後、ご自身のための保険にも入ってくださることになったのです。

 このように、お客様がご家族のプライベートに深くかかわるデリケートな問題について、自ら営業マンに語ってくださることはほとんどありません。

 それに、弟さんに関して心配していることの一部を、「保険」というサービスで解決できることに気づいていないということもあるのです。だから、営業マンがいろいろな話題を提供することで、それを見つけて差し上げることは非常に大切なことだと思います。

 また、これは想像ですが、あのお客様がご家族のデリケートな問題を打ち明けてくださったのは、僕が「両親の事業が失敗して、老後の蓄えが乏しい」というデリケートなことを包み隠さずお伝えしたこともあったのではないかと思います。こちらが、デリケートな問題についても「自己開示」することで、お客様も「自己開示」しやすかったのではないかと思うのです。