資産運用の方針は
コロナで変える必要なし

 はじめに、お金の話をしよう。

 コロナは、昨年3月に「コロナショック」とも呼ばれる急激な株価の下落を引き起こした。そしてその後、コロナ対策の金融・財政政策による「カネ余り」を背景に内外の株価が上昇するような、急激な変動を資本市場にもたらした。

 株価にとって緊急事態宣言の再延長は、経済活動を停滞させる意味で「売り材料」だ。一方で、株高方向に影響する金融・財政政策の継続をコロナ禍の継続が示唆するという意味で同時に「買い材料」でもある。

 それぞれがどの程度であるかの評価は難しいし、今後にどうなるかを予測することはさらに難しい。ただ、多くの投資家にとって最適な行動は、「現在の株価をはじめとする資産価格に現在利用可能な情報の多くが反映されていて、その資産価格の形成にはリスクを負担する上で投資家が要求する追加的なリターン(『リスクプレミアム』と呼ばれる)が含まれているはずだ」と考えて、株価などの資産価格が上がっても下がっても、その時点の価格で自分にとって適切なリスク量の投資を続けることだ。

 投資家として、やるべきことは変わらないし、変えようもない。「資産運用の方針は、コロナで変える必要はない」ということが大きな原則だ。

コロナリスクへの配慮は必要
「資産の流動性=換金性」に注意

 ただしコロナは、個人の生活と経済に対していくらか日頃と異なる大きさや性質のリスクをもたらしているので、その点への配慮は必要だ。コロナ情勢の変化は、読者ご自身やご家族の感染、読者が勤務する会社の業績の大幅悪化や、読者ご自身の解雇や減収といったリスクをはらんでいるからだ。

 こうしたリスクに対処できるようにするためには、資産の「流動性」、端的に言って「換金性」に留意したい。