旧態依然とした企業風土だった化学大手の三菱ケミカルが、成果主義やジョブ型の人事制度を採用するなど抜本改革に取り組んでいる。この4月には、親会社の三菱ケミカルホールディングス(HD)にベルギー人の新社長が就任。今後はしがらみのない新社長の下で、定年延長などの改革を加速させる。だが年功序列との決別を受け、ベテラン勢からは「話が違う」と不満の声も漏れ聞こえる。6月に東京電力HDへと去る小林喜光会長の置き土産でもある人事改革は、果たして吉と出るか凶と出るか。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

「のんびり働くはずが……」
三菱ケミカルの人事改革にベテラン震撼

三菱ケミカル「成果主義」人事にベテラン震撼!小林会長が残した“置き土産”の是非Photo:Bloomberg/gettyimages

「のんびり働くはずだったのに話が違う」――。化学大手の三菱ケミカルでは今、冷徹な人事改革を受けてベテラン社員たちが震え上がっている。

 それもそのはずだ。三菱ケミカルは2021年4月から、社員の年次ではなく実力に応じて報酬や人材配置を決める人事制度を全面導入し、年功序列が残る企業風土にメスを入れている。新人事制度では、働きぶりが悪ければ中高年社員も減給や降格の対象になり、有能な若手にポストを奪われるのだ。

 加えてこの4月には、親会社である三菱ケミカルホールディングス(HD)の新社長に、欧米の化学メーカーで要職を歴任したベルギー人のジョンマーク・ギルソン氏が就任した。三菱ケミカルは今後、しがらみのない外国人社長のもとで、定年延長などの人事改革を加速させる。定年までの“逃げ切り”をもくろんでいたベテラン勢にはたまったものではないだろう。

 新人事制度と新社長は、三菱ケミカルHDの小林喜光会長からの“最後の置き土産”でもある。小林会長はかねて、世界市場で勝つ上では社員の意識改革が不可欠だと説き、外部人材を人事改革の責任者として招くなど変革への布石を打ってきた。そして、この6月末に会長を辞して、東京電力HDの会長に転じる。

 もっとも、過去に小林会長が打った布石の全てが奏功したわけではない。17年にも年功序列の撤廃に踏み切る目的で人事制度を改定したのだが、当時は(年齢に関係なく)有能な人材が多数、会社を去ってしまったのだ。

 そうした教訓を踏まえて、今回はどのような人事改革を行ったのか。