マンションだけでなく戸建て物件も中古の取引件数が前年を上回るなど、堅調に伸びているという。

「コロナの影響で人々のライフスタイルが大きく変わり、住み替えを考える家庭が増えているようです。カウカモで中古物件の購入を検討しているユーザーからは『夫婦ふたりともリモートワークになり、お互いのリモート会議の声が聞こえて不便』『子どもがいて仕事ができないので書斎が欲しい』などの声もあり、リモートワークの観点で家を選ぶ人が多い印象です。住宅市場は経済状況や金利の変動からも影響を受けるので一概にはいえませんが、今後も活況が続く可能性が高いです」

コロナで変わる「マイホーム購入」、住宅市場の新トレンドとは中古物件の成約数が伸び、新築の販売戸数を上回っているマンション市場 画像提供:ツクルバ 拡大画像表示

 住宅市場が活況を呈する一方で「中古物件市場は大きな課題を抱えている」と春田氏は話す。

「需要は伸びていますが、供給量が減っています。コロナ以前から市場に出回る中古物件の在庫は少なかったのですが、2020年度は例年よりも少ない。考えられる要因が複数あるので一概にはいえませんが、需要と供給のバランスが偏っているので物件のストックを増やすことが業界全体の課題になっています」

新築信仰が根付いたのは
選択肢がなかったから

 新築と中古のニーズが逆転しつつある日本の住宅市場。だが、アメリカやイギリスでは中古住宅の流通量は7割を超え、中古物件が市場の中心になっている。そもそも、なぜ日本では新築信仰が根付いているのだろうか。

「あくまで一要因ですが、戦後の住宅不足が影響しています。新築のマンションや戸建ての建造は住まいの数を増やすだけでなく、同時に建築現場で雇用も生まれるなど、さまざまなメリットがあります。そのため行政も政策として住宅の開発を進めてきました。また、住宅を販売するメーカーもより多くの人に新築の住宅を売るための広告を打っていたので、中古物件の情報は表に出にくい状況だったんです」

 そのほか、中古物件のストックが現在よりも圧倒的に少なく、市場に流れにくかったという事情も。こうした背景からユーザー側には「マイホームは新築が当たり前」という意識が根付いたという。