一人っ子政策が撤廃されても、少子化が急速に進行

 1979年から30年以上も実施してきた厳しい産児制限政策、つまり「一人っ子政策」は、2015年末に撤廃され、その翌年から「二人っ子政策」を導入し、産児制限の緩和に踏み切ってきた。

 それにもかかわらず、期待されていた少子化への歯止め効果はほとんどなかった。今年5月中旬、10年に一度の人口調査などを含む第7回国勢調査の結果が発表された。中国の年間平均人口増加率は、1982年の2.09%から2020年の0.53%まで下がり続けているのだ。0.53%という数字は1953年の第1回調査以降、最低だ。

 新生児の出生数を見ると、2人目出産が解禁された16年こそ1786万人と増加したものの、それ以降は17年1725万人、18年1523万人、19年1465万人、20年1200万人と4年連続で急激に下がっている。中国のメディアはこうした統計数字の急降下を「まるで断崖絶壁から飛び降りたよう」と形容している。

 人口減少問題は、労働力供給現場でも日増しに深刻さを増してきている。

 人口14億。世界最多の民を擁する人口大国の中国は、かつて労働力が無尽蔵に思えた。1978年、改革・開放路線を実施してから、約30年間近く人口ボーナスの恩恵を受けていた。しかし、2004年頃から、人口が日本の10倍以上といわれる中国でも、労働力が不足するという現象が次第に表れはじめた。

 広州と深センに代表される珠江デルタや、上海と蘇州が先頭を走る長江デルタなどの沿海部地域だけの社会現象ではなく、中部と呼ばれる地域までその深刻さが語られるようになった。数年前までは、求人広告を出せば地方出身の出稼ぎ労働者が殺到し、30人の募集に対し、300人以上もやってくるといった光景もあったが、それもだんだんと見られなくなった。

 当時、中国社会科学院「人口と労働経済研究所」の蔡昉所長が「中国就職の増加と構造の変化」というリポートのなかでこの問題に触れ、「2004年から新しく労働年齢に達した人口数が労働力に対する需要数を下回り、両者の差が次第に広がってきている」、「中国は労働力過剰時代から労働力欠乏時代へ転換する」と指摘し、そのターニングポイントは2009年だと分析している。