住宅価格の高騰も出生数の減少に影響か

 話を少子化問題に戻そう。

 新生児の出生数が急激に減少した原因は、都市部の不動産価格の暴騰、育児費用、子供の教育費用などの支出に苦しむ若い世代が出産を避けた、ということにもあると指摘されている。

 「環球時報」の報道によると、「90後」(1990年以降生まれの若い人)を中心とした出産適齢期の若い女性の結婚年齢は、主に20~29歳から25~34歳に変わったという。結婚と出産の時期が明らかに遅くなっているのだ。

 これはなぜか。

 14年から、中国全国の住宅価格は北京、上海などの一線都市から地方都市まで、大幅な上昇を記録した。特に15年末から16年初めにかけての住宅市場の乱高下が深刻だった。そのため、全世代の結婚計画が大きく妨害されたり、中断されたりしていた。新生児出生数が4年連続減少している原因は、この住宅価格問題にあると言えよう。

 これらの要因によって、女性の結婚・出産が5年も遅れた結果、人口増加率の低下を招いた。

 さらに、面白いデータがある。アリババグループが運営する中国最大の小売りオンラインショッピングモール「Tモール(天猫)」が発表したデータによると、16年の女性用自慰器具などの成人用品の販売量は15年比11倍、振動棒は51倍に増加したという。不動産価格の高騰で、結婚しようとしても愛の巣が用意できなかったために、こうした消費現象が起きたと指摘する声もある。

 今回の「3人っ子政策」に対し、中国のネット上では、熱い議論や意見が飛び交っている。第3子の出産を奨励するよりも、経済的に負担でき、安心して子作りに励むことのできる社会環境の完備が先だ。中国の若い人たちのこのような叫びがSNSから伝わってきている。

 1992年2月、私は「爆発する中国人口最新レポート」を副題とする『独生子女(ひとりっこ)』(河出書房新社)という本を出版した。この本に書かれた内容をいま、読み返しながら、「第3子出産奨励政策」へ急速にかじを切る中国社会の動きを眺めると、隔世の感がした。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)