台湾・大手と連携強めるほど、日本の競争力は低下

 自民党・半導体議連設立の10日後、経産省は、半導体受託製造で世界最大手の台湾企業TSMCが日本で実施する先端半導体の研究開発を支援し、5年間で190億円を拠出すると発表した。この研究は、国内半導体関連企業約20社が共同で行うそうで、「世界的に半導体の開発競争が激化する中、最先端の技術を持つTSMCとの連携で国際競争力を高めるのが狙い」(時事通信5月31日)だという。

「狙う」のは自由だが、残念ながらTSMCの日本研究拠点と連携を強めれば強めるほど、日本の半導体の競争力が低下していく可能性の方が高い。つまり、わずかに残った世界で戦える半導体装置企業などがTSMC傘下へ組み込まれたり、技術者の国外流出に繋がってしまたりという恐れがあるのだ。

「中国企業ならいざ知らず、友好国・台湾の企業と手を組んでそんなことになるはずがないのでは…」と思う人も多いだろう。

 しかし、このような危険性を指摘する声は、経産省主導の半導体支援がことごとく失敗してきたことを間近に見てきた半導体業界から多く上がっている。その中でも、服部コンサルティングインターナショナルの服部毅氏の指摘が非常にわかりやすいので、引用させていただく。

「韓中両国の大手半導体メーカーのR&D拠点、さらには米国DRAMメーカーの製造拠点が日本に以前から置かれているが、これらにより日本の半導体産業全体の復興が実現しているだろうか。TSMCだけは他社とは違うとでもいうのだろうか。台湾出張もままならぬ弱小サプライヤーが自社製品を売り込むチャンスにはなるかもしれないし、日本の半導体メーカーに見切りをつけて(あるいは無理やりリストラされて)TSMCへ転職したい技術者にはチャンス到来かもしれない。しかし、日本の半導体産業全体の復興につながるような話ではないだろう」(日経クロステック

 服部氏も指摘しているように、海外の半導体メーカーの多くはずいぶん昔から日本に研究・製造拠点を置いている。中には、国内企業と共同研究をおこなったこともある。しかし、それが「日の丸半導体」側に還元されて国際競争力が高まったという話はほとんどない。

 なぜか。答えは簡単だ。