コロナでも通販で
売り上げが8倍以上に

 このような攻めた商品開発の裏には、同社によるデータ分析の強みがある。

「弊社の自販機は商品の時間帯別の売り上げデータを把握することができます。自販機の売り上げが1日で最も多い時間帯は朝で、その後は徐々に売り上げが落ちていきます。しかし、データを詳しく分析したところ、特定の時間帯で売り上げが落ちない商品カテゴリーがありました。ゼリーやフレーバーウォーターは午後4時~午後6時に売れており、スープ飲料も夜に売れています。また、お客様の7割はSuicaで支払いをするので、例えば、『このSuicaの持ち主は朝に立川駅で水を買い、夜に新宿駅でスープを買う』といった『いつ、どこで、誰が』というデータが分かります。こうしたデータを活用し、どのような顧客ニーズがあるのかを考えながら商品開発に取り組んでいます」(小室氏)

 一般的に自販機は月に10万円も売り上げれば上々とされているが、アキュアの自販機の中には月500万円売り上げる場所もあるという。昨年から導入したAIによってロケーションに合った商品に変更するといった自販機内のラインアップの最適化を図るなど、業界をけん引しているようにも見える。

 もっとも近年はコロナによって鉄道利用者が減ったため、自販機の利用者も減少してしまった。そこで同社は新たな販売戦略を開拓することにしたという。

「麻婆スープのアレンジレシピを考案し、レシピで使うマロニーなどの材料も同封したパッケージ商品をネットで販売しました。おうち需要をうまく取り込めたことで、麻婆スープの通販売り上げが前年比8倍以上に増加しました。今後もお客さまの潜在的ニーズを読み取った飲料を開発していきたいと考えています」(大河原氏)

「他社が作っていないものを作る」という意気込みのもと、確実にユーザーの心をつかんでいるアキュア。自由な発想とデータ分析で作られたスープ缶や通販商品には、異業種も学ぶことは多そうだ。