「収入は、うちの会社の給与規定をもとに、支出はとりあえずこの6カ月の支出額から1年分を計算して記入しました」

 明らかに突出しているのが、教育費と生活費です。長男は私立中学で授業料が高く、長女は公立小学校とはいえ複数の習い事や塾に通い、2人合わせると年間400万円近くになります。生活費は月割にすると50万~60万円。

「生活費のうち、家政婦さんには月30万円くらい払っています。仕事は絶対にやめられないし、毎日来てもらわないと生活していけないから。家事を自分でやってみようとしたけど、これまでしたことがないし、平日は時間もないし、とても無理です。子どもたちも勉強があるから、家事をしている場合じゃないんです」

 家政婦さんへの支払いは、年間では約360万円。下の子が高校を卒業する18歳までの9年間続ければ、3240万円です。Aさんは仕事が忙しいので、子育ても家事も妻が1人で担っていました。妻には収入はなかったけれど、仕事に換算したら年間数百万円に値する役割を果たしていたのです。

 もう一つ、Aさんの家計には問題がありました。妻の生前から収支はギリギリで、貯蓄がほとんどなかったことです。

 地価の高い場所に住宅を購入し、車を持ち、2人以上の子どもを塾に通わせて私立に進学させることは、かなり高収入の会社員でもそう楽なことではありません。貯蓄の2000万円は、妻が亡くなる直前にAさんの父親が亡くなり、遺産相続したものでした。今はその遺産を毎月毎月取り崩しているのです。

 Aさんの母親は存命ですが、介護状態でとても孫の面倒を見られる状況ではないとのこと。妻の親族も遠く、これまであまり付き合いもなかったので頼ることはできません。仕事一筋だったAさんは、子どもの友達関係も分からず、子どもを通した親同士の付き合いもありませんでした。「仕事が休みの日は、子どもと一緒にいるだけで精いっぱい。とても家事まではできません」と言います。