コロナ禍でゴーイングコンサーン注記(GC注記)や「継続企業の前提に関する重要事象」の記載企業が増えている。上場企業が決算発表で開示するこれらのリスク情報は、大幅赤字や財務の脆弱(ぜいじゃく)化、資金繰りの悪化など、経営に黄信号が灯ったサインでもある。コロナ禍が長引き、年間を通じて直撃を受けた2021年3月期決算は飲食業などを中心に業績ダウンが続出した。GC注記や「重要事象」の記載企業数は、前年同期から6社増の89社にのぼり、2012年3月期以来、9年ぶりの高水準となった。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)
リーマン・ショック時は
GC注記が過去最多に
「ゴーイングコンサーン(GC)」は、企業活動が将来にわたって継続する前提を指す。業績悪化などでこの前提に疑義が生じた場合、上場企業は決算短信や有価証券報告書に「継続企業の前提に関する注記」(GC注記)として、内容を記載しなければならない。
リスク情報の開示を目的としたこの制度は、2003年3月期からルール化され広く浸透している。2009年のルール改定では、確実性のある対応策がある場合はGC注記の記載は必要がなくなった。だが、GC注記に至らないが事業継続に疑義を生じさせる事象がある場合は「継続企業に関する重要事象」(以下、重要事象)での開示が必要だ。実質的には、経営悪化の度合いに応じて「GC注記」、「重要事象」の2段階で開示されている。
GC注記・重要事象が最初に注目を集めたのはリーマン・ショックの時期だった。金融・不動産市況の悪化に端を発した景気後退は、ゼネコンや製造業にも飛び火し、派遣切りや雇い止めなども社会問題化した。